Random thoughts in Japanese. All optinions are my own.

2022/09/30 (Fri.)

  • 今週は寝ても覚めてもずっとregret boundのことを考えている。昨夜もシャワーを浴びているときにmodulus of convexityのような概念を使えばうまく抑えられる気がしてきたので今日サーベイしてみると、確かにmodulus of convexityやそれに対応する概念としてmodulus of smoothnessというのがあって、なかなか筋は悪くなさそうだ。
  • SNSで「TMLR論文の査読コメントが素晴らしい」と話題になっていて、どれどれ、と思って開いてみたら自分が書いた査読だった、というアクシデントがあった。法外に頑張ったわけではないにはせよ、自分ではそれなりに良い指摘はできたのではないかと思っていたけれど、まさかこういう形で話題になるとは思わなかったので驚いた。
  • 古代ギリシアでは善の起源と達成について長らく議論されてきたのは周知の事実だが、例えばソクラテスが自己との対話を通じて自己と孤独に向き合う「二人の孤独」が思考の起源であり善であると考えていることは知らなかった。これはかなりの説得力があって、だからこそ罪悪感は自己と向き合うことの後ろめたさから生じる悪への反省であるし、さらに悪いのは自己との対話から逃げることであり、その最大の悪の下では人間の思考という尊い能力が喪失するという対価を払わなければならない。これを一言でまとめると、善とはヒューマニズムである、となってスピノザにも通ずるし、なかなかどうして綺麗な論理じゃないかと思う。

2022/09/29 (Thu.)

  • 今週は非常にゆっくりと考え事をしながら研究できていてとても嬉しい。時間をとって興味のある論文を精読すると学びがたくさん得られる。Strongly/strictly proper lossに関しても頭の中が整理されてきて、2つのloss classのギャップは何なのか、regret上界/下界がどのように得られそうか、見通しが立ってきた。Research questionは整理されつつあるので、これが解けさえすれば良い論文になると思う。
  • 今日は日中国交正常化50周年の日とのこと。50周年と聞くと昔のことに思えるが、しかし自分は27歳なのでその半分以上を生きてきたと考えると、なんともたった50年しか経ってないのかと感じてしまう。それにしても20世紀以降の世界というのは安定と繁栄の淵をなんとか歩んできたもので、50周年の今まさに再び危機の瀬戸際に立たされているわけだ。生まれたときから戦争の縁遠い東アジアにいたので当たり前になってしまっているけれども、いつ何時崩壊するともわからない。

2022/09/27 (Tue.)

  • ゆっくりとFrongillo & Waggoner (2021)のリグレット下界の証明を読む時間が取れた。本質的なのは結局のところlossのsmoothnessによって2次下界が得られること。しかしそうすると、Reid & Williamson (2009)のリグレット上界がエントロピーによって得られるのをうまく利用するとproper lossで2次よりも速いリグレット上界が得られそうな気がして矛盾しているように見えて悩んでいたのだけれど、よく見るとReid & Williamson (2009)のリグレット上界はエントロピーの微分可能性を暗に仮定している。エントロピーが微分可能でないときにどうなるかは考えてみる余地がある。結果を出すプレッシャーなく自由に思索できる今は楽しい。

2022/09/26 (Mon.)

  • ここ数日、寝ているときに何の夢を見たのか覚えていないのだけれども、どうも起きた後に嫌な気持ちが残っていて気持ちが悪い。直近ではストレスになるようなことはあまりない気がするのだけれども。

2022/09/25 (Sun.)

  • 引き続き2年ぶり (2020/08/17)に滋賀に降り立った。前回は日吉大社や雄琴温泉、今回は近江八幡を街ブラしようかと思ったのだが、気づいたら長命寺の登山になっていた。近江八幡らしい旅行かと言われるとなんとも言えないけれど、これはこれで人は少なくて涼しい参道と見たことのない角度からの琵琶湖の絶景を見下ろせる点でとても良いリフレッシュになった。山から見下ろす近江の国は、綺麗に広がる田園の平地の中にところどころ小高い山が聳え立っていてなんとも言えない情緒がある。向こうに広がる輪郭の白んだ山の稜線はいつまでも眺めていられる。

2022/09/24 (Sat.)

  • 5月ぶり (2022/05/23)に大阪に行った。今回の目的は中之島美術館とビアフェス。2つ展覧会を回ったのもあって、あっという間に5、6時間経ってしまった。本当は大阪駅でもう少しゆっくりしたい気持ちもあったけれど。

2022/09/22 (Thu.)

  • やりたいと思っていた研究をのんびりとやっている。まずは一番やりたかったproper lossの考察 (2022/06/20)の続き。文献をよく読み込んでいると、実はかなり最近になってようやくScott (2011)によってstrictly convex functionの2階微分による特徴づけがなされたようで、曰く1次元ドメイン上のconvex functionであれば2階微分が0になる集合が内点を持たなければstrictly convexであるらしい。別に証明も難しくなかったので、単にあまり誰も興味がなかったのか。でもこれで自分の中での誤解がひとつ解けた。
  • ロシア国内でも反戦デモがついに顕在化しつつあるらしい。気づいたらもう200日も戦争が続いていて、感覚が麻痺してしまっていることが怖い。明らかに代理戦争でかつ泥沼化してしまっている今の現状、収まるのはいつになるのか。近代史を見ても、やはり70余年も均衡を保つのは限界があるのか。

2022/09/20 (Tue.)

  • 白眉セミナーの発表を終えた!全然関係ない分野の研究者にどうやって自分の研究内容のエッセンスを伝えられるか、ここ1ヶ月くらいずっと悩んでいたので、1時間近い活発な質疑が続いて盛況だったようなのは嬉しかった。どれくらい伝わったかはなんとも言えないけれども、珍しく自分のプレゼンにしては伝えられるベストは伝えたという手応えがある。
  • これが名実ともに夏休み最後の仕事だ。心機一転新しい仕事に取り組もう。

2022/09/19 (Mon.)

  • 最近は忙しい休日が多かったためか、のんびりした休日になると何をすればよいかわからなくなってしまい、長い間積んでいる黒田『関数解析』を引っ張り出して頭から読んでみたりした。しかしまだ線形空間などのかなり初頭的な内容にも拘らず証明まで再現しようとすると非常に時間がかかり、あまり進まない。300ページほどあるこの本、できれば積んだままにしたくないのだけれども、果たして読み終われるのだろうか。

2022/09/18 (Sun.)

  • 最適輸送論文を投稿した!夏休みの間にはなんとか終わらせたいと思っていたので間に合ってよかった。着想を得たのは理研CBSでのディスカッションのとき (2021/12/14)、実際に手を動かし始めたのは博論を終えた後の2月上旬 (2022/02/04)、その後はq-代数の理解が不足していることがわかったり、実装がうまくいかなかったりで4、5ヶ月ほど悩み、最終的に内容がまとまって原稿に着手したのが8月下旬 (2022/08/29)。原稿を書き始めてから投稿までは3週間ほど。頑張ったとは思うけど、もう2ヶ月くらい早くできた気がしないでもない。それでも投稿できただけ偉いと思うことにする。
  • それにしても研究をはじめて5年経っても、論文を投稿したときの晴れ晴れしさは色褪せない。週明けから新しい研究ができるのがあまりにも嬉しい。
  • 月初め振り (2022/09/02)に開化堂カフェに行った。相変わらず半端じゃないほどコーヒーが美味しい。七条河原町は人もそんなに多くなく、休日の朝を静かに過ごすにはとても良い場所だ。

2022/09/16 (Fri.)

  • 今西『自然学の提唱』を読み終えた。今西錦司の名前は河合隼雄 (2022/05/29)井筒俊彦 (2022/08/06)の著作で見かけた気がする。西洋ダーウィニズムとは一線を画した、自然淘汰に基づかない「変わるべくして変わる」進化の世界観を提唱しているのを知って、自分はこの人の言っていることを知らなければならないとその瞬間に強く感じた記憶がある。その直感は大当たりで、全編を通して自分が乗り越えたいと最近強く思う西洋的な主客対立、自然淘汰、個人主義を見事なまでに相対化している。そして、何よりも今西の思想を力強く支えるのが彼が幼少期を過ごした京都西陣・下鴨の自然ということだ。言葉の節々からいかに京都という地が彼の思想を形成するのに重要だったかが伝わってくる。自分は20代特有の不安を大なり小なり抱えながら京都に流れ着いたけれども、そんな不安を吹き飛ばすような嬉しさをこの本から与えられる。僕は京都にいていい、京都で過ごす時間はきっと実り豊かなものになる、そう力づけられている気がする。
  • 論文の英文校正も終わって、あとは共著者の最終チェックが終われば投稿だ。今年の目標 (2021/12/31)のうち、これでジムの再開と主著論文の書き上げが(ほぼ)終わったことになる。もう一つの目標である分野外研究者との研究の目処を立てることはなかなか難しいが、数学方面でのcalibration analysisの発展、strategic learningを通じた経済学・ゲーム理論方面での研究、それからマルチエージェント環境での相互評価から生じる複雑系あたりは周囲の興味がある人と話ができていて、この中で実際にプロジェクトにまで発展するものがあるかもしれない。そしていずれも自分の「良い評価とは何か」というresearch questionに起因する課題であるのがポイントだ。自分の強み、興味を基軸にして、かつ専門に留まらないような研究活動になれば良い。

2022/09/15 (Thu.)

  • Paavoに誘ってもらって一緒に今出川のタツヒトサトイでコーヒーを飲んだ。京大の周りのカフェやレストランはどうも清潔感に微妙に欠けるところが多くてあまり入り浸る気持ちになれないところが多いのだけれども、ここの清潔感はとても居心地が良い。ケーキも美味しくて居室からも近いし、これから気分転換に頻繁に使いたくなる、良いカフェだった。
  • 一日中学生さんの書いた証明を読み続ける。こんな日があっても良い。教員になってもこんな時間的余裕があるのはある意味で贅沢なことだ。

2022/09/14 (Wed.)

  • 京都に帰ってきて、なんとか溜まっていた査読を終わらせた。あとは来週頭の白眉セミナーを乗り切れば、夏休みの仕事はほぼ終わりだ。ゴールが見えてきて心の負担が軽くなってきた。

2022/09/13 (Tue.)

  • 九大ディスカッション終わり。自分がここ1、2週間ほどでぼんやりと妄想したマルチエージェントな相互評価環境は(アイデアレベルにまだ留まっている段階だけれども)面白そうとの感触を得た。勿論複雑系などの分野で既に多くの似たような考察はなされているのだろうけれども、僕自身も自分のフィロソフィーの下でもう少し考えてみたい気持ちがある。ますますこれから忙しくなりそうだ。
  • ひとまず2日間のディスカッションが終わって落ち着いた。本当はうみねこスタンドにも寄りたかったけれど、昨日はそれどころではなかったし、また次に福岡に来たときに取っておくことにする。出張ディスカッションは体力を使うけれども達成感と収穫が大きい。有意義に活用するためにも明日からまた地道に研究を頑張る。

2022/09/12 (Mon.)

  • 九大ディスカッション会にやってきた。3年ぶりの学研都市。九大はもうかれこれ6、7年ぶりじゃないだろうか。この開かれた大地で何年も過ごす自信はないけれども、圧倒的な空間のゆとりには憧れるものがある。
  • 1日目のディスカッションにして一応のオーガナイザーとしてどうなることやらハラハラだったけれども、見ている限り盛況も盛況で、そして同時に自分の学びもたくさん得られた。気になったところをピックアップするだけでも、力学系とエネルギー関数の対応付けから得られるかもしれない知見やベイズモデリングによる「決定的すぎない」統計モデリングの有用性、進化とは何か、進化ゲーム、生態学、などなど懇親会に至るまでオフィスに籠もっていたらできなさそうな話を聞けた。なんでこうもオフラインの会話は収穫が生まれるのだろう。
  • お昼に博多に到着してまず食べた豚骨ラーメンがどうやら良くなかったらしく、帰りの地下鉄の途中で耐えられなくなって駅でお腹を下していた。5月のとき (2022/05/27)のような。あのときも脂っこいラーメンを食べた夜に胃腸炎でお腹を下していた。2回もあると再現性がある気がしてしまう。ホテルに辿り着けて安堵した。

2022/09/11 (Sun.)

  • 週末に久しぶりにまとまった量の文章を書いた。友達と駄弁っているときに研究者のあるべき姿とか社会の向かうべき方向性とか、もっといろいろなことをああでもないこうでもないと語ったりしているのだが、文章としていざ書こうと思うと腰が重くなるので、少しでも克服したいという気持ちから。それと、先月末 (2022/08/27)に立ち寄った何必館の梶川さんの文章の力強さに心惹かれてしまい、少しでも書くことを通じて自分の書く力を鍛えたいという気持ちを再び思い起こされた。良い文章を読み、自分の思考をできるだけ言語化して残す。地道な努力が必要だ。
  • 3ヶ月前 (2022/06/19)に引き続いて最後の2本の親不知を抜いた。今回は抜歯後らしい派手な腫れが出てきて、そのせいか体力が顕著に削られているような気がする。それでもこれで晴れて親不知とは無縁の人生を送れるようになることに対する歓喜の念が抑えられない。

2022/09/09 (Fri.)

  • 半年以上前から依頼されていた学会のお仕事講演が終わった。去年のSIG-FPAIの招待講演 (2021/09/29)よりはだいぶ時間配分がマシで早口にならずに喋れたと思う。この手の1時間近い招待講演は何を求められていて、どういうテンションで喋ればいいのか、未だによくわからないけれども、自分を信じて数を重ねるうちに少しずつ慣れていくしかない。本当だったら東北大で開催されるはずだったわけだけれど、オンラインだとあまり何やってるかわからない感じはある。
  • 一仕事終えたということで、久しぶりにうみねこに立ち寄って飲んだ。先月の風邪以降あまり飲む気がしなくて、うみねこに立ち寄ったのはもう2ヶ月以上振りなのではないだろうか。どこかしらで内心つまらないことだと思いつつも、ビールで新しい体験を味わいつつ仕事のことを忘れる時間は今の自分には必要だと感じる。もう27なのだから。

2022/09/08 (Thu.)

  • ひょんなことから前にヨビノリたくみの動画で知った (2021/09/16)伊藤先生が機械学習で最適輸送の研究をしている人と知見交換したいことを知って、今度お話ししようという約束を取り付けた。僕は一方的に認知していただけなので、向こうが旗を振っているのなら願ったり叶ったりの機会だ。今年に入ってから着実に、これまで機械学習のコミュニティに留まっているだけでは交わることのないような人たちと交流する機会が増えつつあって嬉しい。将来的に面白い研究の着想になることを願いつつ。
  • 共著者に固有値の評価が怪しいことを指摘されて、Gershgorinの円板定理を使うと修正できるという神託をもらった。大昔に聞いたことだけある定理だけれど、こんなところで使えるとは思っていなかったので、またひとつ学びが増えた。技術的な面で共同研究者に頼れると心強い。

2022/09/07 (Wed.)

  • 論文の初稿 (2022/08/31)の校正までひと通り終えた。収束レートの仮定もそれなりに妥当な水準に落ち着いて、論文としても悪くないクオリティになってきていると思う。実装の安定化で苦労 (2022/05/31) (2022/06/21) (2022/07/15)したり、収束レート証明の強凸性をどうクリアするか (2022/07/29)で悩んだりと、ここまでの道のりはなかなか大変だった。あと少し校正作業をすれば投稿できそうな機運だ。
  • 困ったことに体力が落ちているような気がする。一日の終わりになるとどっと疲労感が押し寄せて、プライベートの時間を謳歌する間もなく床に就かざるを得ない日が続く。一日中デスクに座って考え事をしたり物書きをしているのだから眼精疲労が溜まるのは仕方ないので、定期的に、意識的にリフレッシュするしかないのだけれども。
  • 先日のACT-Iのイベント (2022/07/03)で再開したDaniloさんと意気投合して、来週九大に集まってすることになったディスカッションの準備、もといアイデア出しをしている。普段の研究よりも遥かに挑戦的な、従来の枠組みに囚われないような研究の方向性、アイデアを自分の中からかき集めている。こんなときは出来ればオフィスで机にかじりついているのではなく、カフェの喧騒の中でコーヒーを飲みながらアイデアを膨らませたい気もする。

2022/09/04 (Sun.)

  • 日帰りで奈良町、東大寺をぶらぶらした。京都駅から特急で30分、思ったよりも近くて、それでいて自然や空間、建築のスケールが京都とは違う。ゆとりがあって新鮮な時間を過ごせる町並みだった。中学生ぶりの、つまりおそらく約12年ぶりの、奈良だった。
  • 先週末は長楽館や何必館 (2022/08/27)、神護寺、今週は奈良町と、文化的な生活ができていて、良い気分転換になっている気がする。関西に住んだことがなかったので、街の中にいても、少し足を伸ばしても、新鮮な町並みや体験に溢れていて生活が楽しい。

2022/09/03 (Sat.)

  • 夏の間日本でインターンしていたKrisから連絡が来て、突然京都で会うことになった。2019年6月のICMLに本当は一緒に参加できるはずだったのだけれど、僕のアメリカビザが間に合わなかったので、結局最後に会ってからもう3年半経つ。時が経つのは驚くほどに早いけれども、時間のブランクを感じさせないほど多くの話に花が咲く。下鴨神社や祇園をぶらぶらと散歩しながら、近況からAIとクリエイティビティに関する昨今の紛糾、将来のキャリアなど。雨上がりの涼しい京都で話は熱く。次はいつどこで会うことになるやら。

2022/09/02 (Fri.)

  • 怒涛の勢いでスライド作りを進めたので、だいぶ余裕がでてきた。とても偉い。
  • ご褒美として帰り道で開化堂カフェに立ち寄ってコーヒーを飲んでいる。ただのブレンドがすごく美味しい。ナッツの甘さのような香りが特徴的な気がする。Kielo Coffeeでコーヒーに感動した (2021/12/12)とき以来の体験。正直なところコーヒーの味なんてそんなに喫驚するほど変わらないだろうと思っていた時期が長かっただけに、段々と記憶に爪痕を残すコーヒーに巡り会えていることが嬉しい。

2022/09/01 (Thu.)

  • 9月になった。8月は風邪で寝込んでいた時間が長すぎて、ほとんど何もせずに終わってしまったような気がする。本当はもう少し研究を進めたかったのだけれども仕方がない。
  • 先週よりは頗る精神的な調子がよくなったので、仕事がどんどん進んでいるのがせめてもの救いだ。9月の前半を駆け抜けて、9月中に新しい研究に手を付け始めたい。
  • 関東大震災から99年、さっきまで気づかなかった。来年で100年目と思うと、なんだか近いような遠いような出来事だ。