Random thoughts in Japanese. All optinions are my own.

2022/04/28 (Thu.)

  • 行列スケーリングで解くのを諦めた方が筋が良いかもしれない。仮に行列スケーリングで解けなかったとしても、計算効率は良くないかもしれないけれども、一応ニュートン法で解くことはできるし、停留点条件は解のスパース性やロバスト性の観点から解釈はできそうである。そうした解の性質がTsallis統計とつながるという知見を提供することは、研究としては悪くはないのではないだろうか。
  • この研究を考え始めてから2ヶ月、本来は研究をする上でそんなに急いで立て続けに論文を書き上げる必要はないのはわかっているけれど、どうしても焦ってしまう。今考えているTsallis統計の話は数理的には好きだけれども、一方で研究の動機的な意味では評価関数の話にはやく戻りたいという気持ちも影響している。自分の気持ちと成果のアウトプットはなかなかうまくコントロールできない。

2022/04/27 (Wed.)

  • 昨日の続きで、非線形な未定定数の拘束条件はやはりS-lemmaやFarkasの補題の変種にもはまらなさそうだ。凸不等式系の実行可能性解析は、基本的に凸不等式の線形結合を考える。凸不等式自体はFarkasから非線形拡張されているけれど、不等式結合自体は線形のままなので、この制約を突破できない。
  • 今の方向性でかれこれ一ヶ月近く悩み続けている。このまま考え続けるべきか。Tsallisの行列スケーリングが何を解いているのかわかったら間違いなく僕は嬉しい。もし答えに辿りつけるのなら考える価値はあるが、辿り着ける保証はどこにもない。

2022/04/26 (Tue.)

  • やはり考えている問題が難しすぎる感じがある。q-積でfactorizeできる停留点条件はTsallis正則化付きでかつq-期待値な目的関数から導出できるのだけれども、q-積を含むため計算上なかなか厳しい感じがする。一方で、q-積ではなく通常の行列積でfactorizeできる停留点条件を導き出そうとすると、停留点条件を双対変数に関する集合としてみなすと非凸集合になるため、どうも従来の凸解析ではうまくいかなさそうなことが見えてきた。そうすると自然な発想としてはFarkasの補題の非線形拡張を考えることで、これはどうやら最適化屋さんや制御屋さんが考えていて、S-lemmaというのがあるらしい。曰く、Farkasでは線形方程式系を考えているのだけれども、同種の二者択一な性質が少なくとも(正定値とは限らない非凸な)二次形式では成り立つらしい。今日はこれ以上もう考えたくないけれども、二次形式でいけるのなら少なくともTsallisから導出される停留点条件にマッチしている気はする。また明日考えることにする。

2022/04/25 (Mon.)

  • 自分の研究で考えている数学が難しくて、研究室の学生さんの数学の話を聞いて気分転換してたら、そちらの方で少し進捗が見えたので嬉しい。学生さんの抱えていた問題もまあまあ難しい算数で、部分的にはsup‖AX‖をちゃんと考える必要がある。何かというと、ふつう行列Aについてsup‖Ax‖を正規化ベクトルxについて考えるとこれはスペクトルノルムになるわけだけど、今考えたかったのは作用対象がベクトルではなくて行列Xな場合。でも少し真面目ににらめっこすると、行列Xのvectorization「vec(X)」を考えることによってAXが(AT⊗I)vec(X)のように書けて、そうするとvec(X)を正規化ベクトル上で動かすことができて、実はシンプルにAのスペクトルノルムで書けてしまう。考えている問題としては最終的にAの要素に関する解析がしたかったので、スペクトルノルムをFrobeniusノルムで抑えればとりあえずの解にはなった。1週間ほど結構悩んでいたようなので、これで進めるといいのだけれども。

2022/04/23 (Sat.)

  • 病院に行ったら2時間待ちと言われて、それなら、ということで思い立って待ち時間で岡崎の方に行ってきた。目的地は泉屋博古館。丸太町通の東端にあって、白川通のもう一つ向こうの鹿ヶ谷通にある。普段生活している丸太町通がずっと伸びていって唐突に三叉路で途絶えるというのが新鮮。
  • 泉屋博古館には、同僚が発掘に関わっていたモンゴルの漆器が展示されているとのことだったので行ってみた。おそらく常設展で展示されているのが中国古代の青銅器なのだと思う。教科書の写真でだけ見たことのある青銅器や青銅鏡だが、意外と本物を見たことがない気がする。ものによっては青銅が精巧に薄く伸ばされていて、たしかにこの加工技術には驚かされる心持ちがする。正直なところ、こうした博物館の展示の見方が未だにわからない気持ちがあるのだけれども、それでも例えば匈奴の漆器が発掘されたりすることは関わっている人たちにとっては中国王朝と匈奴の関係性に対して何か示唆を与えるものであり、ワクワクするのだろうな、という気持ちが少し垣間見えた、ような気がする。

2022/04/22 (Fri.)

  • ユクスキュル『生物から見た世界』を昨日読み終わった。友達が長い間推していた本だったので、ようやく読めてよかった。150ページ余りの小冊子だったが、環世界というアイデアを余すこと無く専門家でない市民にもわかりやすく、絵や馴染みやすい言葉で語りかけてくるのが印象的だった。常に市民にわかりやすい形で述べることが良いかどうかなんとも言えないところではある(市民にとっての理解可能性が一つの価値基準として絶対化されることにも忌避感があるから)けれども、学問とはこうあるべきだというのを強く感じさせられる。
  • 昨日のアウトリーチの件だったりとか、今朝日課の論文読みをしているときに唐突に自分の過去の論文の至らなさを思い出したりして、さらにユクスキュルの圧倒的な世界観と学問的貢献を目の前にして、ちょっと暗い気持ちになってしまった。自分のこれまでの仕事の中で、人の前で胸を張って語れるようなものが一体あるのだろうか。COLT論文は面白い内容だとは思うのだけれども、自分の技術的な至らなさのせいで論文としては不完全燃焼な形になってしまい、なかなかこれを胸を張って人に読んで欲しいとは宣伝しづらい気持ちがある。ひとえに自分の仕事が入念でないことに尽きるのだけれども。だからより一層、とりわけCOLT論文に関して言うのであれば完全な形に昇華させたい気持ちが強い。
  • 岩波文庫に挟まっていたしおりで、「営む」は「暇(いと)無し」に由来していてこれは英語の “business” が “busy-ness” に由来しているのとパラレルだ、と紹介されていた。そうかもしれない。人生はどれだけ「仕事」(職業的な仕事だけには限らない)を通じて自己実現できるかによって自分で価値付けされるのだろうから、生活を送ることは忙しくすること、逆に「仕事」で忙しくなくなったときは生きる意義を見つけるのももしかすると難しいのかもしれない。この見方からは、人生にある種の「余裕」がないことは肯定的に捉え直せるかもしれない。

2022/04/21 (Thu.)

  • 白眉プロジェクトでPRWGに入ることになったのだが、既に半年分話が進んでいるのでなかなか状況がまだよくわかっていない。京大125周年イベントに合わせてアウトリーチプロジェクトをしていて、それ自体は自分も興味があるのだけれど、アウトリーチは本当に一筋縄ではいかなくて、WG側もどうやって運営をするべきかかなり悩んでいる。「10分」のときは自分がどうやって一般聴衆に対して伝えるかを考えて悩んできたけど、運営側で一からイベントを立ち上げるのは更に大変だ。

2022/04/20 (Wed.)

  • 帰り道に百万遍を歩いていて感じたことなのだけれども、自分には大学のキャンパスの雰囲気がやっぱり合っているかもしれない。新学期で学生が大勢そぞろと歩いて帰っていくのを眺めるだけでも、なぜか安心感がある。木の生い茂ったキャンパスも心地よい。飽きるまではしばらく大学という環境でのんびりするのは悪くないかもしれない。
  • 昨日ランク分解を使って考えていた問題は、negative resultを示せた。ランク分解周りに関する理解が進んだのと、この方向性で進んでも解が得られないことを示せたのは朗報なのだけれど、これでは論文にならないのが悩みどころ。ここからどうやって次の一歩に進められるか、まだわからない。

2022/04/19 (Tue.)

  • 午後はミーティング2つとセミナーが連続。やりきった感。
  • 研究のことをひたすら考えている間に、階数分解やランクに関する不等式に辿り着いた。このあたりの基礎線形代数は大学一年生のときにはどうにも定義や定理の嬉しさがわからなくてモチベーションが湧かないものだったけれども、今になって重要性が身にしみる。先人が何度も言っていることだけれども、学部生の数学は本当に重要だ。

2022/04/17 (Sun.)

  • 昨日は久しぶりに鴨川を散歩した。木屋町二条のあたりを初めて通った。隠れ家的な落ち着いた通りで、いくつか惹かれるレストランがあった。
  • 前から気になっていた二条のMIZOに行った。千本通に面しているにもかかわらずかなり落ち着いた店内で、コース料理も分量のバランスが良くて主張の激しすぎない、けれど小さな新しい発見があるような、素敵なイタリアンだった。

2022/04/14 (Thu.)

  • 湿度の高い日が数日前から続く。まるで梅雨のような蒸しっぷりでどうにも苦手な天気だ。
  • 2日前になるが中島『中国哲学史』を読み終えた。どうしても欧米、日本以外の思想史に関しては疎いことに対してどうにかしたい気持ちがあり、ちょうど最近出たのを見つけたので読んでみたら、諸子百家の時代から20世紀まで一気通貫でまとまっていて良かった。いくつか気になる思想家もメモをしているので、今月の暇なタイミングでブログ記事にでも起こしておきたい。
  • 研究はなかなか進まない。毎年この時期はNeurIPSに出すか出さないかで悶々とするのだけれども、そもそももう機械学習の国際会議のシステムを信頼していないので、そんなことを考えずにのびのびと勉強と考察をしたほうがいい。それはわかっているのだけれど、それでも考えてしまうのがもどかしい。

2022/04/13 (Wed.)

  • 昨日の今日でコーヒーに誘われたので大塚さんと対面で挨拶と雑談をしてきた。最初は自分の研究の話(目的関数と評価のギャップ)、そして大塚さんの研究の興味の変遷(分析哲学的なアプローチにシフトすることで哲学的議論を「地に足をつける」こと、そして「概念」を「類似性」から理解すること)、数理・論理によって記述できる可能性と限界、プラグマティズムと科学・研究や認識論の関係(「役に立つ」ことが良いことなのか)、科学研究と社会情勢の不可分な関係(ラマルキズムと優生学、ルイセンコ論争)、そして数理モデルの「良さ」の評価まで、多岐にわたる話をしていた。1時間半でこんなにも熱の入った雑談ができて、ここ最近で最も幸せな時間のひとつだった。これだけでも京都に来た価値があると思う。考えることはたくさん考えてきたけれども、ここからどうやってアウトプットしていくのか。道は長いけれども楽しみである。

2022/04/12 (Tue.)

  • 早朝からCLeaR2022に参加している。自分が参加する中ではたぶん初めてのハイブリッドイベントだと思う。マイクのトラブルがままあって事前にテストしておいて欲しい気持ちはあったものの、オーラルの部分は概ね悪くはないかと思う。ただ、Zoomのブレイクアウトルームを使ったポスターセッションはやはり閑散としていてどうにもならない。Zoomはポスター発表には向いていない。
  • そもそもCLeaRになぜ参加しようと思ったかといえば、最も大きい理由は大塚さんが発表をするから。2年前に大塚さんから著書の査読を依頼されたときは時間がなくて最終的に断ってしまったのだけれども、その後仕事を引き受けなかったことを長い間後悔していた。結果的に京大に来ることになって、研究棟も隣の隣くらいなので、挨拶ができてよかった。
  • お昼はPaavoと久しぶりにランチに行った。Paavoも京大に1年ほど前からいることは知っていたのだけれども、僕の生活が落ち着いてきてようやく声をかけるに至った。前にあったのは2年半前のパリで、当時はまさか次に京都で会うとは全く思っていなかった。相変わらずsolidな仕事を着々とやっているらしくて流石だと思った。僕も自分の研究をやりっぱなしではなくて、他の研究者や民間の人にreachableな形にまとめ直す仕事をするべきだと思わずにはいられない。ジャーナルとかソフトウェアとか。

2022/04/11 (Mon.)

  • ひょんなきっかけから1年前の論文の修正作業のことを思い出してしまった。だいぶ暗い気持ちになって帰りのバスも降りそびれそうになるところだった。1年前の日記を読み返すと、自分が記憶していたよりも生々しく精神を病んでいる様子が残っている。そういえばそんな状態だった気がしてきた。喉元過ぎれば熱さを忘れるというやつか。あれがここ1年でのメンタルのどん底だったと思う。それ以来はだいぶマシになっている。
  • いずれにしても、敵対的ロバスト性に関してはもっと理解したいことがあるし、自分が蒔いた種を回収しきっていないと思う。研究として完成させるためにも、そして倒錯的だけれども自分の精神を未だに残っていると言わざるを得ない束縛から解放するためにも、ちゃんと知るべきことを知ってジャーナルを書きたい。非常に変な話だけれども。

2022/04/08 (Fri.)

  • 投稿していた論文の査読が返ってきたので、リバッタルするために自分が書いたはずなのに忘れている内容をもう一度読んで思い起こす。読んでいると数式が間違っている場所を見つける。メインの論旨と比較的関係ないところではあったけれど、あまりにも盛大に間違えているので、一体3ヶ月前の自分はどんな精神状態でこれを書いたのかと疑ってしまう。やはり一度論文を書き上げて投稿してしまうとそれ以降はなかなか気乗りしないけれども、淡々とやるしかない。

2022/04/07 (Thu.)

  • なんと一日でミーティングが4件もある怒涛の日だった。午前11時半から立て続けに6時半まで、取材、研究のディスカッション、イベントの打ち合わせ、プロジェクトの打ち合わせ。流石に精根尽き果てた。

2022/04/06 (Wed.)

  • 先月にIBISMLに参加したときの今泉さんのトークや、坂上さんと会ったときのディスカッションに触発されて、メカニズムデザインに興味が湧いている。今日はまた坂上さんと数人で、とりあえず機械学習の人間から何ができそうか雑談をしつつ、実は最近NeurIPSでもstrategic classificationに関するワークショップが開催されていることを教えてもらった(Learning in Presence of Strategic Behavior, Learning and Decision-Making with Strategic Feedback (StratML))。この辺りを取っ掛かりにしながら、数理モデルにもう少し社会科学との接点を持たせられないか。むこう数年で考える価値のある課題だと思う。
  • 着任早々周囲の人間の微妙な確執を知る。どちらの言い分もそれなりに道理は通ってると思うのだけれど、確執が凝り固まってしまっているのでなかなか双方コミュニケーションを取りづらいように見える。理想論を言えば、腹を割って話せば解決しそうな話のように見える。けれども人間、大人になってしまった以上プライドはどうしても譲りづらい。自分が少しずつ話をしつつ上手くかすがいとして立ち振る舞えたらいいのだけれど。

2022/04/05 (Tue.)

  • 色々あって朝からハローワークに行った。社会人5日目でハローワークに行く人もなかなかいないだろうと思うので、ちょっと面白い。
  • 着任後の手続きがだんだん落ち着いてきて、査読も先月中に気合いで終わらせたので、研究に割ける時間が増えてきた。必ずしも進捗が生まれるわけではないけれども、研究をしていると進んでいる感があって嬉しい。

2022/04/02 (Sat.)

  • 首藤先生が京大に着任したらしくて仰天した。長いこと准教授だったのでたしかにいつ上がってもおかしくなかったけれど。それにしてもPMとプロジェクトメンバーとしてお世話になってから6年越しに今度は同じタイミングで同僚(?)になるとは、いやはや世の中どんなことが起こるかわからないものだ。
  • 今日は西陣のcafe marbleに行った。前通りがかったときから行きたいと思っていた。西陣という立地のおかげで幸か不幸かお客さんがまばらで、ナチュラルな雑貨が並んだゆったりとした空間で落ち着いた雰囲気でとても良かった。西陣まで気軽に散歩に行けるのは嬉しい。
  • 夕方には、ついにゴールドジムに通い始めた。ジム通いを始めることは年始の抱負の一つだったので、まずは一つクリア。本当に2年ぶりのワークアウトだったせいで、当然だが当時よりも全然筋力が落ちていて愕然とする。またゆっくりと始めるしかない。他の抱負を眺めると、主著論文一本と分野外の共同研究。こちらはどうなることやら。ついに着任したことだしこれから次第だ。

2022/04/01 (Fri.)

  • 辞令を貰った。これで正式に着任。流石に契約されないことは無いとは思うけれども、それでも辞令を貰う瞬間まで契約書もないので、少しばかりは職についた実感が出てきた。
  • マーケットデザイン、哲学、数学、最適化、自然言語処理、様々な方面から面白そうな話が舞い込んできて、でもせっかくだからと思って二つ返事でとりあえず首を突っ込む。自分のキャパシティが足りるのかどうか不安ではありつつ、これから本当に自由に研究を開拓できる高揚感を抱きつつ。