Random thoughts in Japanese. All optinions are my own.

2022/03/30 (Wed.)

  • 3月も終わろうとしているけれども結局何も研究が進んでいない。何をやっていたのか何となく振り返ると、査読10本(厳密には内あと1本終わっていないけれども)で約8人日くらい、学会の発表と聴講で6人日くらい、卒業式関連で平日4人日くらい使っている。これで約18人日。3月の平日は22日なのでこれでほぼ終わり。道理で時間がないわけだ。どう考えても査読を減らすしかない。せめて7〜8人日くらいは研究時間を取りたい。

2022/03/28 (Mon.)

  • 京都に帰ってきて、大学に戻ってきた。今週末には年度を跨いでついに仕事が始まる。ついにはじめての社会人27歳。可笑しい響きだ。
  • 答辞を公開した。こんな内容なんて喋っている本人ですら日常的には意識に上らないからこそ、ひとりでも多くの人に響けばいいなあと思って力を入れて書いた甲斐もあったようで、少なくない人に感想を貰った。頑張った甲斐がある。
  • 帰ってきたばかりだけれども、今週は査読をなんとか終わらせながらAISTATSとFIMIになんとか出れるか出れないか。今週を乗り切ればなんとか時間に余裕ができる気がする。いつも「今週さえ乗り切れば」と言っている気がする。

2022/03/24 (Thu.)

  • 学位記授与式当日。長旅の疲れか緊張のせいか、早朝集合にもかかわらず電車をうっかり乗り過ごしてしまうなどした。安田講堂に入って演台の上に立つと緊張感で体が満ちてきた。一旦答辞を読み始めると、もう周りのことが気にならなくなって、自分が喋りたいように喋れたのではないかと思う。大役を任されたのは光栄でもありつつ、今は重責から解放された安堵の気持ちが大きい。
  • 自分は全く藤井総長とは打合せをしていなかったにもかかわらず、総長の式辞と自分の答辞の内容が驚くほどに噛み合っていて驚いた。ひょっとしたら総長が合わせてくれたのかもしれないけれども、いずれにしても科学技術社会論からリカレント教育まで、自分の課題意識と深くリンクしていた。総長の前に立って答辞を読めたことは本当に身に余る光栄だし、個人的には藤垣先生が臨席されていたのも感慨が深い。
  • 式典後は旧友たちと久しぶりに会って写真を撮ったりした。博士にもなるとほとんど知り合いもいないのだけれど、それでも再会する人一人一人に対して「ああ彼・彼女もさすがだなあ」「知り合えて良かったなあ」と思えるのは、博士課程まで来た人たちならではの感慨のように思う。今日は各々忙しいのもあってゆっくりと時間をとって話尽くすことは叶わないけれど、これから先彼らと議論し尽くすまでは絶対に生きていこうと思える、やや誇張気味だけれども人生を肯定できる気がした。

2022/03/23 (Wed.)

  • 1ヶ月ぶりの東京。東京駅に着いてまずは一度も行けず仕舞いになっていたインターメディアテクを超特急でまわり、本郷で坂上さんと会って、数理7研の他のメンバーも交えて2時間くらいディスカッションした。7研の人たちは専門性の高さと広さでいつも圧倒される。今日も自分のネタに対して最適化の観点のみならず微分方程式や代数系の面からも興味を持ってもらえた。何も説明しなくてもq-analogを知っていたのには舌を巻くしかない。
  • バタバタのスケジュールの中だけれど、ちゃんと行きたいところ、話しておきたかった人と話せて良かった。インターメディアテクは圧倒的な量の骨格標本と民俗学的資料が展示されていて、今日は15分くらいで半分しか見れなかったのが悔やまれる。

2022/03/22 (Tue.)

  • 京都に引っ越してきてあっという間に1ヶ月経ち、あっという間に卒業式で東京に行く日が近づいてきた。明日は年末の理研ぶりに坂上さんと1-on-1で議論することになったので、雑談の種がてらに坂上さん-藤井さんのAAAI22論文にさらっと目を通した。藤井さんが前々から推していたらしいBayesian persuasionを組合せ制約下で考えた論文。Bayesian persuasionはsenderとreceiverの情報格差を利用してsenderが双方の利得が向上するようにreceiverの行動を意図した方向に仕向けるようにsignalを送る枠組みで、基本的な定式化は線形計画で行えるらしい。元々は経済学の文脈で10年前に登場したばかり(!)で、最近はNeurIPS、OR、EconCS界隈で研究されているらしい。Bayesian persuasionに限らないこの手のテイストを持ったメカニズムデザインの研究、たぶん自分が目指したい研究のゴールの一つなように感じている。
  • NISTEP-AIPの「AI x 科学技術社会論」のセミナーを覗いてみた。理研の高橋恒一さんという方がイントロで喋っていて、ご自身の専門である生命科学の自動化の紹介からはじまってカントの真善美の話まで風呂敷を広げていて驚いた。若干話し方が衒学的なところが鼻につくのだけれど、少なくとも科学のAI自動化のタイムライン策定のような純粋科学者にとってはあまりすすんで飛び込む気持ちの湧かない、ただ大局的には重要ではあるような課題に地道に取り組んでいたり、そういうのが質疑やパネディスから伝わってくるような思考量が垣間見えてきて、正直なところ学ぶべき姿勢は多いなと感じた。

2022/03/20 (Sun.)

  • ブースターを打ち終わった。2回目の接種のときよりも副反応は気持ち軽いくらいで、朝起きて熱は出てたけど解熱剤を1回飲んだら午後は普通に外出できる程度になった。

2022/03/18 (Fri.)

  • 考えていた研究、意外といけるのかもという気持ちになってきた。Deformed algebraの性質が普段扱う実数体と全然異なって、欲しい性質がなくて悩んでしまうことも多いけれども、直感が働かないのが新鮮感があって面白さはある。
  • 査読をやって、後輩のリバッタルの面倒を見て、こういうときが一番疲れる。自分で何も生産的なことをしてないんじゃないかという気分になる。後輩もわざとやってるわけではないのは頭ではわかっていつつも、これくらいの水準は当然クリアして欲しいなと思う潜在意識もあって、その葛藤に自分の中で収拾をつけるのが難しい。好きな人と好きな仕事をやっているのが一番楽しくて楽だけれど、それは長期的な目線に立ったときに本当に社会のためになっているのかよくわからないし。広義の教育は多かれ少なかれ必要だと思うけれども、未だに自分がこなせる気があまりしない。
  • 兄弟の病気のことを考えるとまた暗い気持ちになってしまった。一人勝手に生活して兄弟のことを親に任せっきりで良いのか。一方で僕が側にいたところで本質的に大したことは何もできるように見えない。こうやって家族は一生背負い続けていくのだろうか。人生の先は、背負うにはまだ長すぎるというのに。

2022/03/16 (Wed.)

  • 昨日野矢茂樹の「語りえぬものを語る」を読み終わった。自分が日頃悩んでいることに直結するような問題提起や考察が行われていて、とても良い本だった。500ページを超える大著なのでなかなか内容を簡潔にまとめられるものでもないのでキーワードだけでも残しておくと、相対主義、翻訳可能性、言語の分節化、世界の相貌、決定論、あたりだろうか。加えて、途中で登場したロバート・フォグリンの言葉がとても良かったので、これもメモしておく:「人間の理性は野放図にその本領を発揮させるとろくなことにならない。われわれは理性の手綱をとらねばらない。しかし、理性の手綱を理性にとらせるというのでは洒落にもならない。そこで(中略)理性を非概念的な制約に服させ粘らないと訴える。(中略)非概念的な制約を逃れて理性が野放しになった最たるものが、哲学なのである。逆に、きわめてうまく手綱がとれている例が、自然科学だと言える」
  • 今日の午前は1年半振りに松浦先生に誘われて、松浦研ミーティングでゲストトークをさせてもらった。当時お世話になっていた松浦研の人と久しぶりに会えて嬉しい。もう8年も経つというのに未だに良くしてもらっているし、思い返してもやはり松浦研での経験が自分の研究生活の原体験になっていると感じる。
  • 午後は早めに大学を出て寺町三条の同時代ギャラリーに行った。何かで京都芸術大学プロダクトデザイン科の展示があることを知って、なんとなくふらっと行ってみた。ぼんやりと展示を見ていると今回の展示の発案者の大江さんが声をかけてくれてだいぶ喋り込んでしまった。曰く、プロダクトデザインはややもすると「安く」「便利で」あることを要求されてしまうけれど、本当に「良い」デザインとは何か、それを追求しなければならないと。そのためには今ある素材からどのようなデザインが可能性としてあり得るのか、道具との関係性はどのように保っていくべきなのか、見つめ直す必要がある。このあたりは自然科学の研究に非常に大きく通ずるところがあって、自分も悩みに悩んでいることなので、ついつい共感してしまった。行ってよかった。

2022/03/15 (Tue.)

  • 先週ホワイトデー用に買ってきた河原町のEast 42th NY Brownieが美味しい。京都は東京に比べてもこういう洋菓子、和菓子が多いような肌感があって、こうやって少しずつ開拓していけると思うと地味に嬉しい。
  • 今週の白眉セミナーはとても良かった。いや基本的に白眉研究者の方々はみなトークがうまくて聞いてて楽しいのだけれど、たまに分野外の人間が取っつきづらいトークがある。今日のトークを振り返っても、分野外の人間でも基礎となる背景知識を十全に理解できて、研究の動機と嬉しさが伝わるのが、面白いと思える秘訣のように思う。そのためには、トークする側は自分が本当に話したいことと聴衆が聞きたいと思っていることのギャップを強く意識する必要がある。ポール・グライスの提唱するコミュニケーションの原理を思い出す。

2022/03/14 (Mon.)

  • 朝からなんとなく下らないことで苛立っていたけれども、世の中大抵のことは自分のせいだと思えば落ち着く。高校の友人と去年駒場祭の後に話したときのことも思い出す。結局のところ、自分が他人にどれだけ負って生きているのかなんて自分で認識できないのだから、基本的な生きる姿勢としてはgive and giveくらいでちょうど良いのだ。別の友人も「他人に迷惑をかけても許せる社会が良い」と言っていた。それはシンプルな言葉で、日々を生きているだけでは耳に残らない言葉だけど、たまに思い出すとちょうど良い。
  • 毎年この時期は新しい研究をいそいそと始めるのだけれど、妄想段階ほどうまくいくわけがないので、どうしても悶々としてしまう。確実に学びは深まっているのだけれども、それが研究成果に繋げられるのかどうか覚束なくて不安になる。でも、知って、学んで、考えるのは楽しい。今日もdeformed algebraにおける一般化指数・対数関数と四則演算の関係についての論文を眺めていた。考えれば考えるほど、指数関数の定義は美しく、完璧だ。

2022/03/11 (Fri.)

  • 一ヶ月ぶりにようやく自分の研究に戻ってきて、一ヶ月前に考えていたことからすんなり進むかなあと期待していたのだけれども、やっぱりうまくいかない。Tsallis統計では正規化、周辺化が通常の統計とは異なってしまう。一筋縄ではいかないので考えることがあって、良く言えばここからやり甲斐があるところなのだけれど、ちゃんと形になるのだろうかという不安もありつつ。
  • 昨日は元々京都にいた知り合いと河原町でクラフトビールを飲んだ。一乗寺ブリュワリーの直営店のICHI-YA。たぶん一ヶ月ぶりにビールを飲んだ。このあたりは他にいくつもクラフトビールバーがあって嬉しい。

2022/03/08 (Tue.)

  • 昨日の話、ちょうど読み始めた野矢茂樹の本に「相対主義・寛容主義のパラドクス」として紹介されていてタイミングの良さを感じた。つまり、「絶対的な価値観は存在しない」という相対主義が絶対的であったりとか、「全てに対して寛容であるべきだ」という寛容主義が非寛容であったりとかするパラドクス。解決に至る明快な答えはないのだけれども。
  • IBISML研究会に一日参加して知り合いの話をのんびり聞いたりしていた。研究キャリアのミドルステージの知り合いの話は、みな向かっている方向性や価値観に深みがあって、議論していると面白い。特に菅原さんの話が好きだ。研究対象や手法は全く違うけれども、漠然とした課題意識としては非常に似通ったものを感じるので、何か一緒に仕事ができれば本当に嬉しい。新年の抱負として立てた「分野外研究者との共同研究」と呼ぶには菅原さんはいささか分野が近いかもしれないけれど、価値観を共有して仕事ができるのであれば非常に良い一歩でもあるように思う。少し考えてみたい。
  • 提出していた卒業式答辞に対して、なんと須田先生から文学部長の方までファクトチェックが回っていて、文学部長の秋山先生から “art” の語源についての議論とフィードバックを貰った。一介の学生に対して専門的見地からコメントが貰えて嬉しい。余裕があれば秋山先生のご専門のデューラーについても知ってみたい。

2022/03/07 (Mon.)

  • エリートは他者に積極的に興味を持ち、巻き込み、巻き込まれ、多様性を尊重し、社会を動かしていくべきだと思うけれど、この理念を多くのエリートと共有するのは一筋縄ではいかない。蓋し難しいのはこの理念を押し付けてしまうと逆説的に多様性を認めない立場に陥ってしまうという点だ。多様性を尊重する立場からは、他者に興味を持たないエリートの存在も肯定する必要があるのだろうか。
  • 大学に来始めて1週間、最近は人の研究に興味を持って積極的にフォローアップしようとしているけれども、あまりにもやりすぎると自分の研究をやる時間がなくなってしまう。でも自分のやりたい研究の中で社会にとって本質的な仕事はいかほどあるのか。そう考えると、自分一人でやる仕事の時間を投げ捨ててでも、他者を積極的に巻き込むことを考えるのも悪くはないのかもしれない。マネージャーはこういうことを感じながらなっていくのだろうか。

2022/03/04 (Fri.)

  • 弊所と某研究室、某ベンチャーとの間でここ数年の間に起こっていた揉め事の顛末を聞いてしまった。本当のところ、中心人物である二人の間にどんな確執があったのかは知らないけれども、そのせいで多くの周囲の人間が巻き込まれて精神的な負担を受けたり学術的活動に支障をきたしていると思うと、何ともやりきれない気持ちになる。結局綺麗事を言っても現実はこれなのだ。
  • 答辞の原稿を書き上げた。27歳の自分の思想をありったけ振り絞って書き上げて、友達にも見てもらった。一人でも多くの人の心が動かせればよいのだけれど。

2022/03/03 (Thu.)

  • 昨日感じていたこと:どれくらい積極的に他人から持ちかけられた仕事に取り組むべきか悩ましい。今度のマネージャーは非常にフランクな人で、僕もそれが好きで選んでいるし、本人も仕事を断っても全く構わないという前提で話をしているのだけれど、やはり良くも悪くも教員の立場になると思った以上に自然と仕事の量が増える。それは学生指導しかり、外部研究員との共同研究しかり。自分としては外からやってくる話にはできるだけ積極的に取り組むことが、相手に対する敬意にもなるし、翻って自分にとっても役に立つ可能性があるかもしれない、できるだけrecallを上げたいという気持ちがある。けれどもリソースは当然有限であって、じゃあその閾値をどこに設定するのか悩ましい。これは今に限った話ではなくて今までも、これからもずっとそうなのだけれど。
  • 引っ越してきて早くも10日くらい経とうとしている。ようやく部屋の整理も落ち着いてきて、仕事も査読が一旦片付いて一段落が見えてきた。今週末くらいから平常運転の生活に戻せるような気がする。

2022/03/02 (Wed.)

  • 大学2日目。人が行き交うのはやはり良いもので、とんかつを食べながら久しぶりに外国人研究者と雑談をしていた。英語の雑談が久しぶりだったもので、予期せず一時間近く昼寝をしてしまったけれども。
  • 月曜日に教えてもらったDAG With NOTEARSを朝のバスで眺めた。構造方程式を記述するDAGを推定するときの「DAGらしさ」を記述する離散制約式の代わりとなる連続制約式を提案した内容なのだけれど、久しぶりにこんな動機も手法もシンプルで良い論文を読んだ。良い論文は、読後に何か拡張をしてみたいという気持ちを自然と沸き立たせる。

2022/03/01 (Tue.)

  • ようやく重い腰を上げてメモアプリをEvernoteからNotionへ移した。Evernoteを使い始めたのは高校生のときだから10年以上は使っていると思うのだけれど、ここ数年はインターフェースがかなりバグっぽくて使っていてストレスを感じてばかりだったので、ようやく足を洗うことが出来た。