Random thoughts in Japanese. All optinions are my own.

2025/05/31 (Sat.)

  • 近代美術館のヒルマ・アフ・クリント展を見に行った。ヒルマ・アフ・クリントのドキュメンタリー映画 (2022/05/08) を見てからちょうど3年、ようやく本物に対面できた。一見抽象的で難解ながらも、彼女が一貫して描きたかったのであろうメッセージが通奏低音として流れているのが、いくつもの作品を通して眺めていると浮かび上がってくる。スケール、色使い、モチーフに、必然性がある。デタラメでない、まさにこの色、というのが見えてくる。これだけの量の作品を目の当たりにしたから体感できるのだなと思った。

2025/05/30 (Fri.)

  • Yutong のトークのホストをし終えた。最初の一週を無事に過ごしてもらえたので(別に大したことをしているわけではないけれどやはり多少気は遣う以上)安堵した。部屋に帰ってきてどっと疲れた自分に気づく。
  • Yutong のトークは本当にすこぶる良かった。Ordered partition にせよ PERM loss にせよ、何度読んでも論文を表層的に読んでいるだけでは到底到達できなかったお気持ちが、華麗な視覚化で非常にわかりやすく構成されていた。特に Weston-Watkins loss の conditional minimizer が integer lattice になるのが驚きだった。Binary hinge loss の conditional minimizer が +1, -1 になることから外挿できなくもないが、しかし lattice が連続最適化の解として現れるのはやはり直観には訴えてこない。
  • トークの後は multiclass loss の構造もそうだし、学生の指導の仕方の話でだいぶ盛り上がった。僕自身が研究するときは好奇心ドリブンでしか問題を選んで解けるかどうかは気にしておらず、最終的に解けなさそうなときは気合で解ける形に持っていく、みたいな強引な腕力でねじ伏せてきたのだけれど、それを学生に期待するのは難しいと感じていた。けれど Yutong はそれで良いんじゃないか、長いかもしれないけれど時間をかけて解ける形に持っていくのも、学生と教員が議論する意義だと言う。文字にしてしまえばそうなのだけれど、意外とその言葉で気が楽になったかもしれない。

2025/05/28 (Wed.)

  • 今日は朝から Yutong との共同研究で単調回帰のことを考えながら、昼下がりは内輪のセミナーで介入効果推定と二重頑健推定を聞き、夕方はミーティングで特徴学習理論の話をして、今に至る。アカデミックにはもうこれでもかと言うくらい充実している。自分一人では重い腰をあげてまでは飛び込まないだろうなというトピックに浸ることができて、好奇心が非常に刺激される。そしていずれも多かれ少なかれ統数研に来たおかげで実現している。ありがたい限りだ。
  • Yutong とランチのときに「学生の面接で何を聞くべきか」みたいな話をした。自分は経験が浅いので正直イメージがあまりなく、彼が言うに「行列積のアルゴリズムを書かせて改善案を考えさせてみる」とか「determinant やランクについて聞いてみる」とか、それはなかなか絶妙なスポットを突いているように思う。自分も使ってみようかと思った。

2025/05/27 (Tue.)

  • Yutong が統数研に来た!去年の年末に熱い議論を交わした (2024/12/11) のも冷めやらぬ間に、「東京ぜひ来て」という社交辞令(?)が本当に実現してしまった。2日目にして一日中二人で新しい研究テーマについて議論し、お互い集中してコーディング、サーベイし、作業から戻ってきてはまた議論する。これが1ヶ月近くできるのか?学生時代、いや、当時よりもお互い研究力がある分、それ以上にエキサイティングな時間だ。年末は議論に没頭して近況報告もあまりまともにする時間がなかったが、ご飯を一緒にゆっくり食べる時間もあると議論の続きから最近の情勢まで思うままに話せる。あまりに贅沢すぎてまだ実感が湧かない。

2025/05/26 (Mon.)

  • 仕事終わりに立川駅周辺で時間を潰すために当てもなく彷徨う。こんな時間の使い方は久しぶりで不安になる。それだけ日々パソコンの前にかじりつきすぎている。たまに思う。これだけパソコンに日々縛り付けられているのは傍から見れば滑稽だろうなと。

2025/05/25 (Sun.)

  • ふらっと五月祭に行って「10分」の講演を眺めていた。もう全然知らない学生だらけだけれども、ぼんやりと当時の精神性が伝承されているのが垣間見える。最後に行ったのは3年前の駒場祭 (2022/11/18) だけれども、当時に比べてもう集客量がもとに戻って、いやそれ以上に客入りが良くて、常時教室が人で埋め尽くされていた。
  • 五月祭に来てももはや誰も知り合いはいないので、ひとりで上野まで歩いて The World End に行った。もう何年ぶりなのかもわからない。鉄門から上野に至る道を最後に歩いたのさえもう遥か昔なような気がする。懐かしくて感情が溢れ出そうになる。数えてみると僕がこの道を使って灯台に通学していたのはせいぜい 2015、2016、2019 の前半の2年半程度だったはずなのだけれど、信じられないくらい脳裏に刻みつけられている。20代の時間の濃密さを今になって実感している。

2025/05/24 (Sat.)

  • 締切も乗り越えて多少息をつけるようになったので、依頼されていた博論審査 (2025/03/19) の原稿を読んでいた。200ページ超えなので流石に全部を読むのは無理だが、最も主要な結果だけはどうにか理解したいと思って、3日くらいかけて概ね読み切った。50ページ分くらいをざっくり7〜8時間くらいかけて目を通した。ロバスト・スパース回帰の収束レートの導出、generic chaining などのテクニックを含めて、非常に勉強になった。証明の大枠はわかったつもりになったけれど、なぜこれで既存研究に比べてレートの改善ができているのかはまだ良くわからない。まあそれは審査のときに聞いてみればよいだろう。初めての博論審査だが、審査に臨む最低限の準備はできたような気がする。

2025/05/23 (Fri.)

  • 今日から2週間の立川出張。色々と重要度が高めの仕事が続く。
  • 初めてのオープンハウスでは(当初はポスター発表のコアタイム40分だけ喋ってサボろうかと思っていたけれど)結局コアタイム後もダラダラとほぼ2時間くらいポスター発表をしていた。やっぱり自分はポスター発表は結構好きなのだなと思う。しかも喋っていると、何人か自分の過去の論文、それも相当マニアックな AISTATS2021Entropy 論文を読んだことがあるという人が訪れてきてくれて、望外の喜びだった。論文を見たことがあるだけでも嬉しいのに、このあたりの渋い論文を挙げてくるのはかなり嬉しい。何年も地道に研究をやるものだなあと思う。
  • 1年ぶりの同窓会 (2024/03/29)

2025/05/22 (Thu.)

  • 海外の学生を話をしていたら、割と分野では業績を上げている(が自分は認知していなかった)faculty に名前を覚えられていたらしいと聞いて、やっぱり論文はちゃんと書いておくものだなあと思った。お互いに会ったことがなかったとしても、良い仕事を高いクオリティで積み重ねるだけで信用される。
  • 先週友達と会ったときに「なんで地道に研究を宣伝してコミュニティを広げようとしているのか」という質問をされて、即座には答えられず言葉に一瞬詰まったのだけれど、とどのつまり自分のことをもっと知ってもらって、翻って興味の近い人を引き付けてたくさんの人でより面白い仕事ができたら良いよね、ということに帰着するのだろうなと思った。「良い仕事」「大事な仕事」というのは仕事の質が高いことはもちろん、その質をそれなりの人たちが認識していることも含んでいるように思う。そのためには地道なコミュニティ活動が欠かせないというのは、僕の少ない経験でも感じているところだ。

2025/05/21 (Wed.)

  • 今週から湿気が一気になだれ込んでいる。集中力の低下を感じる。
  • 締切は過ぎたが地道に論文直し。耐え忍ぶのみ。

2025/05/19 (Mon.)

  • 両親と足立美術館に行った。こうやってどこかに出かけるのも何年か振りな気がする。もう三十も回ったし、意識しないとこういう機会は減っていくばかりだろうなと感じる。

2025/05/18 (Sun.)

  • 実家に帰ってきてそのまま昔のデュエルマスターズのカードをまとめて出荷した。大仕事をなした。もう遊んでいた当時は19〜20年前とかになるのか。実家を片付けるのは途方も無いけれど少しずつ進んでいる。

2025/05/17 (Sat.)

  • 友人の結婚式。大学院からの付き合いで気づけば8年。家族婚に近い形で友人枠としての参加はどんな雰囲気になるかやや不安だったものの、親族の和やかな雰囲気のおかげでおだやかな時間を過ごさせてもらった。8年か。一緒に論文を書いたり温泉行ったりビアフェス行ったりひたすら自転車漕いだり、いろいろとしたものだ。

2025/05/16 (Fri.)

  • 午前中は広尾に来た。久方振りのフランス大使館。結局 COLT に聴講だけだけど行くかと決めてからたった数日で、トントン拍子で面接に進んだ。有栖川公園とか本当に文字通り2年ぶり (2023/01/20) に来て、でも広尾駅から少し路地に入ったら当時の光景が蘇ってきた。ちなみに今回はビザの申請は想定していたよりもだいぶスムーズに進んだ。前回は面接のフランス被れ女史に「フランス語喋れないんですか」マウントを取られて衝撃を覚えたのだが。まあだからというわけではないけれど、コツコツフランス語を勉強していているのが功を奏したか、待合室で流れるフランス語のニュース、掲示されているフランス語の案内の意味がところどころ捉えられて、それはものすごく嬉しい。能動的に独力で外国語を学ぶのが初めてなので、これは達成感があるものだ。
  • 午後はてんやわんやで NeurIPS の投稿論文のうち最終日まで収束していないものを3つくらい同時並行で編集しながら、なんとか乗り切った。もう国際会議の締切当日はスポーツみたいなものだ。無事に(?)終えてサークルの旧友と西荻窪で落ち合う。西荻窪なんて本当に10年ぶりくらいなんじゃないか。何の記憶もないけれど、西荻窪に偏狭的な愛を注いできてた友達に連れられて時間を気にすることなく飲み歩く西荻窪の街は魅力が尽きない。中央線沿線は人情がいまだ根付いている。

2025/05/15 (Thu.)

  • 共同研究の論文をひたすらに書いて直す。もう自分の研究はいつからやっていないだろうか。2ヶ月も経ってしまった。この締切が終わったら、と自分に言い聞かす。前シーズンの締切 (2025/02/07) は自分自身の研究も共同研究も内容・文章ともに完成させてやり遂げた感覚があって清々しかったが、今シーズンはそういうことはなさそうだ。前シーズンの論文が自分たちの「出来た」という感覚にもかかわらずすべて不採択になってしまったので、いまは粛々と作業のように論文を直すだけ。ワクワク感ももうそんなにない。でもそういうフェーズは絶対にいつかは訪れるのだから仕方ない。

2025/05/14 (Wed.)

  • 今日も相変わらず新幹線、中央線の中で論文を直しながら立川にやってきた。論文を修正していたら昼過ぎから Overleaf がダウンしてしまい仕事ができなくなってしまった。仕事を休め、という啓示だと捉えて所内のセミナーをぼんやりと聞いている。果たしてまだ編集中の共同研究群は間に合うのだろうか。
  • 職場の同僚と飲みに行った。なんだか今日は飲みたい気分だった。大学院生指導はどうあるべきかを談義したり、数理の研究のゴールは他分野と比べてどうあるべきかを延々と語ったり。しまいには今日の所内セミナーで話題になった over-relaxation を勾配最適化の観点から捉え直したらどうなるかをノートで議論し始めたり。論文を書くのも重要なんだけれど、一個人としては酒場で議論するこれくらいの時間は重要なのだなあと思う。
  • 1年半前 (2023/11/20) に板尾さんに会ったときに「研究者同士なのに会話の二言目に研究の話にもならないときは残念だ」という言葉が実は嫌にこだまし続けていた。今日飲みに来て、統数研はやっぱりみんな研究が好きで、二言目には数理の話をしようとする人たちが集まっている(少なくとも僕の周囲には)のだなと、安心した。

2025/05/13 (Tue.)

  • 慌ただしすぎる。タイから帰ってきた束の間、明日また東京に行く。いま仕事に全力で打ち込まなければ後生こんな機会には恵まれない、とは思いつつも、自分のリソースが細分化されていくのを感じる。振り返ると自分が関わっている共同研究が単純に自分のキャパシティに照らし合わせて多すぎるのだろう。それでも。与えられた短い時間で精一杯多くのことをやってみて、達成感を感じたいものなのだ。

2025/05/12 (Mon.)

  • 日曜はラーメンを食べに出かけて、帰ってきてゲームをやったりした。休日を満喫できた気がする。おかげで今日はやる気が少しずつ戻ってきた。
  • ここ数日なんとなく不調なのは、(出張に研究発表続きでバーンアウト気味だったのを差し引くと)研究の方向性が見えなくなってきているのが部分的な理由になっている気がする。たまに人に会ってやっぱり loss function って大事だなと思う瞬間 (2025/04/25) はあれど、あまりに流行から置いていかれていると時折感じるし、査読者との応酬でも loss function に関して興味を持ってもらえていないと感じる節々もある。まあ要するに自分は何のために仕事をしているのかと自問自答して落ち込んでいるということだ。内省は必要な時間ではあるけれど、しすぎるのもよくない。この締切が過ぎたらひたすら何も考えずに loss function と最適化をかけ合わせた研究に没頭してみるというのも悪くはないのではないか。

2025/05/09 (Fri.)

  • タイから帰ってきて1日半ほど横になって倒れていた。出張中ほとんど土日もなく出突っ張りになっていたから流石に体力がもたなかった。今後長期出張するときはもうこういう無茶はできない。きちんと休日を入れた予定を組まなければ。
  • 今日になってようやく少しずつ論文を直したりし始めた。学生のミーティングに出るのが億劫。うまくいっていない研究をどのようにうまく持っていくか。もう少し自分の時間をガッツリと投下して方向性を見つけないといけないのだろうけれども、出張と論文修正で手が回っていない。

2025/05/07 (Wed.)

  • いろんな学生のミーティングを見ていると、テーマ設定が本当に難しいと思う。結局学生の底力がどれくらいあるかによってどのレベルの研究がまとめられるかがかなり変わってくるので、よほどのことがない限りは教員が解けることをほぼ確信しているテーマを設定する必要があるのかもしれない。少しでも挑戦的なテーマは、学生が相当に底力がない限りは振るべきでないという気がしてきた。うーん、自分も関わっている学生に僕自身の好奇心ドリブンでそれなりに挑戦的なテーマを振っているから、本当にこれで良いのかどうか悩んでいる。

2025/05/06 (Tue.)

  • 学会を終えてスワンナプームにいる。AISTATS は来てよかった。COLT はコミュニティとしてかなり硬派な側面もある一方で、AISTATS は居心地の良さもありつつ solid である。NeurIPS・ICML・ICLR に行くくらいなら、COLT・AISTATS に行ったほうが満足度は間違いなく高い。
  • 2週間ほどの東南アジア学会出張がようやく終わった。流石に人と喋る時間が長くて疲労が溜まっている。帰ったら NeurIPS の準備も待っているが、しかし2週間で1時間トークを2本、3時間ポスターを4本やり遂げたので、自分を労いたい。ラウンジでビールでも飲むか。

2025/05/03 (Sat.)

  • AISTATS、蓋を開けてみたら参加者は本当に一つの会議場に入り切るくらいのサイズで、やっぱりこれが国際会議の醍醐味だよなと思った。ポスターでたまたま研究を聞き、その後ディナー会場に行くまでに偶然知り合った David と最適化コミュニティや COLT の話を長々としていて、だいぶ仲良く慣れたのが嬉しかった。ICLR ではこんなことはまずあり得ないよなと思う。
  • そう、COLT と言えば、まず通るだろうと思っていた学生の論文が通らなかった。かなりチャンスは高いと思っていたのに。正直なところ過去一番不採択になったことに驚いた論文だった。COLT コミュニティに一番好んでもらえると思っていたし、そのつもりで論文を書いていただけに、これからどうすればよいのか。

2025/05/02 (Fri.)

  • シンガポールからプーケットへ。チャンギ空港も論文を直したりミーティングをしていたらあっという間だった。
  • はじめてのタイがまさかのプーケット。学会会場はご多分に漏れず華々しいビーチで、コンドが何棟もプールを囲んでいる本格的なリゾートだった。こんな会場はじめてすぎる。AISTATS は毎回こんな豪華な会場なのか。はじめての AISTATS がシチリアからオンラインになってしまった (2020/08/28) あのときから5年、明日からようやくはじめての AISTATS 現地参加だ。
  • リモートで研究の相談に乗っているインドの学生とはじめて会った。実は彼が去年やっていた研究は、どうやら僕が ACML2022 で Naresh に会ったとき (2022/12/13) になにかの折に僕自身が喋ったアイデアが元になっていたことを知った。むしろ僕は当時 Naresh から教えてもらった decision tree の話が新鮮で、僕自身そんなアイデアを喋った記憶のほうが薄かった。そんなことがあるのか。世界は狭いし、こうやって3年経つと玉突きのように優秀な学生が飛び込んでくるのか。面白い。こんな大きな世界が目に見えるような力学で動いているのか。

2025/05/01 (Thu.)

  • 今日はシンガポールは祝日で、かつ僕も今日が実質シンガポール最終日なので、軽く観光に出かけた。と言っても何も調べていなさすぎるので右も左もわからず、ふらっと植物園と中華街、マーライオン公園、Fort Siloso を見て回った。しかしあまりにも湿度が高いので、外で歩いて耐えられるのは1時間くらい。もしかすると次に来るときは(観光の目当てによるが)日中は室内で過ごし、夜に観光に繰り出すみたいな戦略を取ったほうが良いかもしれない。
  • シンガポールもあまり一人で来て楽しむような場所じゃなかった。そう考えると去年一人旅の行き先にアルゼンチンを選んだのは慧眼だった。あそこは一人で全然楽しめた。