Random thoughts in Japanese. All optinions are my own.

2023/04/29 (Sun.)

  • 1ヶ月前の洛南高校教師を囲む会 (2023/03/31)の第2回が敢行された。「ストレージ」の話や人工知能と創発、自由意志の話などが議論されて、相変わらず予測不能な話題の展開にはハラハラする。本当は今日は行くまでは気乗りしなかったのだけれど、行ってみてやっぱり行ってよかったと思えた。
  • 自由意志についての自分の解釈は「自然現象・決定論的な存在論と、自由意志をプラグマティックな社会的合意として認める認識論の2層構造」として捉えていると言ったが、あれは間違いだった。僕はむしろ前者の決定論的存在論に対しては懐疑的で、なぜかというと自然法則の記述自体が具体物の特徴を捨象して興味のある側面だけに着目した近似でしかない以上、いかなる自然法則を持ち出したとしても決定論的にすべての力学を記述するのは不可能だから。そのため決定論的な自由の本質的欠如は起こらないと思っている。ただし、この議論はおそらくラプラスの悪魔の存在性問題に話が帰着されているとは思う。

2023/04/28 (Fri.)

  • Cosine 損失の解析がそれなりに進んで綺麗な形になりつつある。最初に手を付け始めたとき (2023/04/17) は正規化項も含まれているし人間が解釈可能な形にはなかなかならないだろうなと悲観的だったが、想定していたよりもかなり綺麗な形になった。von Mises-Fisher 分布の計算と Bessel 関数の性質を賢く使う必要があるので、導出自体も非自明性が高い。Cosine 損失の力学系解析なんて話自体聞いたことがないし、これだけでも貢献になるとは思う。あとは残りの計算を済ませて論文の形に仕上げるのを締切までに間に合わせられるかどうか。非常に面白いところまで来ている。
  • そろそろコロナももう良いだろうということで、研究室の新入生歓迎会をなんとなく言い出して今日開催した。情報系の研究室だしずっとオンラインでセミナーをやってきたので皆人並みにシャイなのかと思っていたけど、思っていた以上に参加してくれたし、お互い会ったら会ったで和気藹々と話をしているし、結局みんな人とのつながりを求めてるわけなのだな。盛況なのを見ると僕も言い出して良かったと思える。

2023/04/27 (Thu.)

  • 今日はイベントの動画撮影で、医学部キャンパスの奥にある橘会館に行った。学生紛争前は総長用の宿舎だったらしく、格調高い庭園つきの和室だけでなく、モダンな作りの部屋も備えた、いまはセミナーでも十分活用できそうな建物。大学関係者だったとしてもこんな施設があるなんて知らない人の方が多いに違いない。
  • 朝から撮影で喋って、研究室に帰っては学生さんとディスカッションして、喋りっぱなしの一日。喋るのはやはり嫌いではない。手を動かすのが疎かにならないように気をつける必要だけはあるが。
  • 動画撮影で思わず出演者に「研究をするプレイヤーとしての自分とマネージャーとしての自分のバランスをどう取るか」聞きたい気持ちが抑えられなくて、撮影中に質問した。確かに自分がすべてプレイヤーとしてやってしまうと後進が育たないという問題はあって、自分が手を動かしたい気持ちを少し堪えて周りの人を頼るというのは大事なスキルのようにも思える。その人は「ライフステージに応じて自分の立ち位置を見極める」といった旨のことを言っていた。それは言い得て妙なのかもしれない。

2023/04/26 (Wed.)

  • 京都に戻ってきて職場初日、まあまあ普通通りに仕事ができている。広島にいる間は人の原稿を前にしてもまったく頭に入ってこなくて仕事にならなかった。あれは何だったんだろう。実家の重苦しい雰囲気もあったろうし、職場の環境に自分の作業スタイルが次第に最適化されている気もする。
  • 1ヶ月くらいで研究ネタの主要な部分が完成しないと、段々と先行きが怪しくなってきて熱意が冷めてきてしまう。今の研究も行き詰まりつつあって手を動かす気持ちになれなくなってきた。

2023/04/25 (Tue.)

  • 帰省の最終日に所用で広島市内へ。広島駅から八丁堀、本通り、平和記念公園まで歩いた。中高生の頃はこの距離をゆっくり歩くほどの心の余裕がないことが多くて(なにせ30分以上かかるから)、こうして歩いてみると路面電車の架線が空を覆う都会の町並みという、他では見られない景色をぼんやりと眺めたりする機会になって、ああ、やっぱりここは広島で、自分の原風景のひとつなんだなと感じる。広島市内も再開発がどんどん進んでいて昔の町並みが失われつつあるけれども、それでも瀬戸内の町に流れる独特の律動がある。別に何があるというわけでもない町並みだけれども、僕にとってはこの町並みが忘れられないひとつのシーンなのだ。

2023/04/24 (Mon.)

  • 珍しく実家のベッドが合わないのか、体の節々が固くなって地味に痛む。体もだるくて頭も回らない。研究も計算がちょうど詰まったところで止まっているので気が進まない。いろいろなことが重なって家の雰囲気もお世辞にも明るいとは言えない。早く京都に帰りたい気持ちが日増しに強まる。

2023/04/21 (Fri.)

  • 学内の学生さんから「包の論文に興味がある」という連絡をもらって、それ自体は当然嬉しくないわけはないのだが、大学という教育機関ではどうしても指導 ・被指導の関係に縛られてしまうがゆえに、おいそれと気軽に相談に乗りづらそうだということがわかってきた。加えて、ただでさえ学生さんの人数の多い研究室だから、それほどリソースを割く余裕がないという事情もある。そういう連絡を周囲としているとなんだか疲れてしまった。
  • なぜこれほどまでに大学はリソースが足りないのだろう。究極的には教職員の雇用リソースが足りていないこと、あるいは雇用規則や待遇の厳しさに帰着されるのだろうけれども。だから結局は(逆説的に)厳しい状況下でもなんとか社会から理解を得られるようなサービスを提供する必要がある気はするけれども。

2023/04/20 (Thu.)

  • 広島に帰省。2021年10月 (2021/10/18)ぶり。レールスターに乗るのなんて子供の時以来な気がする。調べたら山陽新幹線の下りダイヤで唯一この一本しかなかった。
  • 新幹線の中でスライド作りをしようと思っていたのに、今週はずっと頭の中で von Mises-Fisher 分布の計算を考えていたせいでついつい新幹線の中でもノートの上で計算をし続けていた。3、4日ほど考え続けた結果、ようやく loss のパラメータ勾配の計算が終わった。それなりに合理的な仮定の下で手頃な勾配形が得られて満足した。この形の常微分方程式であれば、もう少し頑張れば数値解が計算できそうな見た目がしている。

2023/04/19 (Wed.)

  • 学生さんに Hodge 分解について教えてもらった。去年トーナメントのレーティング評価を行う論文を読んだときに組合せ Hodge 理論が使われているのを見たのだけれどすっかり忘れていて、今日丁寧に教えてもらって大部分を思い出した。理論の背景にある動機まで教えてもらったので理解が深まった。Hodge 理論を最初に見たときは「こんなものがあるのか」くらいにしか思わなかったけれど、変数選択や因果探索にも使えそうで段々と気になってきた。こういうのは本当に学生さんがいる環境の良さだと思う。
  • 今日もひたすら von Mises-Fisher 分布の評価計算。もう少しで何か意味のある結果が見えてきそうな気がする。

2023/04/18 (Tue.)

  • 球面上の確率分布、等方的共分散の von Mises-Fisher 分布、ゼロ平均の Bingham 分布、そして平均と分散を同時に一般化した Fisher-Bingham 分布。できれば Fisher-Bingham 分布が使いたいのだが、この辺になると全然研究が進んでいない、というかおそらく計算が難しくて、手頃に使える結果がない。果たしてこの計算を完遂させることはできるのだろか。

2023/04/17 (Mon.)

  • Cosine 損失の解析に挑戦してみたほうがよさそうだったので、先週末から取り組んでみている。勾配をとるのが難しい見た目をしているのでほとんど無理だろうと思っていたが、その想定よりは幾分か楽な形をしていて比較的綺麗な式になったのだが、非直感的な結果が得られてしまってどこが間違っているのだろうかと頭を悩ます。超球面上の確率分布なんて日頃全く考えないもので、何か初歩的な間違いをしていないものかとひやひやする。この計算ができたら既存の解析の枠組みから一歩大きく踏み出せるはずなので、なんとかやりきりたいところ。
  • von Mises-Fisher 分布が実は等方正規分布を「ノルム=1」で条件付けると誘導されたり、それを非等方な共分散行列に拡張して同じ操作を行うと Fisher-Bingham 分布という確率分布が誘導されるなど、意外とこのあたりのことを知らない。こういう「角度」に興味のある統計のことを「方向統計」と呼ぶらしい。

2023/04/16 (Sun.)

  • 久しぶりの神護寺。新緑の季節に来たのははじめてで、若干桜の香りの残る山の空気と木漏れ日が気持ち良い。
  • お昼は堀川丸太町のlienでランチをした。散歩しているときに気づいて気になっていた店だった。前菜の意匠を凝らした食材の組合せが醸し出す新しい食感と風味に驚く。モッツァレラと海老と柑橘を合わせようという発想にどう至るのか。どの食材が欠けても、すべてが揃ったときの風味に敵わない。果てしない試行錯誤の末に見つけた組合せなのだろうか、と思いを巡らす。

2023/04/14 (Fri.)

  • メモ: Plurarity。研究室で流れてきた情報で、技術一極集中に対するアンチテーゼとして提唱された概念らしい。気になる。
  • 台湾ではなぜテクノロジーと民主主義の調和がうまくいっているんだろう。いや、僕自身台湾情勢に詳しいとは言えないので、表面的にうまくいっている事象を知っているのみにすぎない可能性はある。もっと知る必要がある。

2023/04/13 (Thu.)

  • よく考えてみると、今考えている微分方程式は非線形といえども高々2次の常微分方程式なのだから、さっさとプログラムを書いて数値解を計算してやれば良い。こういうときには(馬鹿みたいな感想だけれども)コンピュータはやはり「計算機」なのだなと感じる。手元で数行のコードを書いただけで微分方程式がものの1秒で解けてしまう。100年前に比べれば相当便利になったものだ。
  • Contrastive learning の理論解析で既存研究がこぞって L2 損失を使い続けてきたのが、実は全く筋が良くないのではないかという気がしてくる。L2 損失を使いたくなる気持ちは非常によく理解できるのだけれども、実際の実装との挙動の乖離が明らかな以上、そして解の縮退の意味すらも再解釈されてしまっている以上、解析の結果は数学的な面白さ以上のことが言えていない気がする。こういうのを negative result として示してみるのはどれくらい意味があるだろうか。

2023/04/12 (Wed.)

  • 勾配流解析、なかなか一筋縄ではいかない。パラメータが少し悪いとすぐに解が発散したり縮退してしまう。微分方程式の扱いは難しいし、有意味なシグナルを捉えられる系の発見というのはパズル的な面白さがあるということは感じる。あと2、3週間くらいで意味のある結果に辿り着けるだろうか。

2023/04/11 (Tue.)

  • 研究室の席替えが終わって昨年度と違う席の並びになって、まだあまり落ち着かない。自分のいるフロアは去年より留学生が増えて、僕は英語が喋りやすい環境なのでこの方がどちらかといえば好きではあるけれど、日本人と留学生と同時にコミュニケーションしようとすると若干面倒なことになる。まあきっとそのうち慣れるだろう。
  • OpenAIが日本進出を考えているニュースが出たけれども、日本に進出したところで研究開発人材は十分でないだろうし、結局市場として消費されることになるのだろうか、と考えを巡らせてしまう。学生さんがみんな揃って博士課程に進むべき、とは思わないけれど、しかしもう少し国内博士課程の層が厚くなっても良い気はしていて、どうして現状の層が薄いのか考える。でも結局のところ、博士号をとることによるプラグマティックなリターンがさして見当たらないという点に集約されるのだろう。北米や中国のように、高給を目指して博士号を目指す世界が良いのかどうかもわからない。北米では博士卒業後にアカデミアに人材が残らないと嘆くPIも目にする。それに必ずしも博士号のない研究者がダメというわけでもない。無闇矢鱈と大学に人材を集めたいという気持ちも有限リソースのゼロサムゲームに組み込まれてしまっている。果たしてどこが目指すべきゴールなのか、そしてそれは「誰」にとってのゴールなのか。

2023/04/10 (Mon.)

  • 研究者のワークライフバランスについて議論になっているが、働き方は各人が好きなようにしたらいいと思うし、契約内容以上のことは他人に強要するべきでない、以上に特に言うことはない。
  • 最近SNSで集中をかき乱されることがまた段々と増えてきた気がするので、もう一度ブロックする。基本的に見ていないときが最も健康的に生活できる。
  • 投稿中の論文 (2023/02/10)の査読結果が返ってきた(実際に帰ってきたのは週末)。それほど悪くない結果で、とりわけ “technically solid” とか「このコミュニティの興味に align している」といったフィードバックが並んでいて、ひとまず少し安堵している。そもそもコミュニティにおけるそのあたりの主観的な感覚をまだ探っている段階で、だんだんわかってきている気がする。3時間ほどかけてリバッタルを書いて投稿。

2023/04/08 (Sat.)

  • 2年ぶり (2021/04/26) に着物を着て東山を散歩した。今回は南禅寺の水路閣を中心に。南禅寺も2020年 (2020/11/16)に行ったのが最後だったので、水路閣や疏水の雰囲気が懐かしくて思い出に浸りながら歩いていた。三脚を用意して写真を撮って回る。どんな画が撮れるのだろうと試行錯誤するのはアマチュアなりに楽しいひとときだった。
  • 2年前の東山散歩のときは、本当に仕事が大変で精神的に参っていた時期だった。思えばこの5年くらいであの頃が一番ひどかったような気もする。よくぞ乗り越えて今ここにいるものだと思ってしまう。

2023/04/07 (Fri.)

  • 数日間考え続けていた微分方程式がようやく解けそうな端緒が見えてきた。学部以来まともに微分方程式なんてやってこなかったけど、いかに非線形微分方程式を解析的に解くのが難しいかがよくわかった。それでも頑張ってギリギリ認められそうな仮定を置いていくことでなんとか可解系に落ちた気がする。あとは解いてダイナミクスを見てみる段階。週明けにどのような結果になるのか、楽しみである。

2023/04/06 (Thu.)

  • ゆっくりと勾配流解析の思索に耽る。線形代数の技術が美しくてつい見とれてしまう。

2023/04/05 (Wed.)

  • 今日も学生さんの論文の赤入れ。全体的にはよく書けているけど、細かい論理構造や言い回しを改善しようと思えばできる。そんな細かい話を指摘するのはテクニカルなパートからすれば本質的ではないし、ライティングのスタイル自体各人の好みによるブレもあるし、どこまで赤入れして本気で直すか悩みものだけれども、学生の間に一度いろいろと言われておくのは何かの経験になるのではないかと思って、細かめに添削することにした。本当はテクニカルパートを早めに見たほうが良いのかもしれないけれど、文章に対して責任を持つのも少なくない研究者としての矜持の一つだと思うから。
  • 午前に学生さん1の数学の質問に対する回答を考え、お昼に学生さん2の研究相談に乗りつつ、午後は学生さん3の論文添削をする。思ったよりもなんだか先生然している。時間に余裕があるときはこれくらいやってもよいし、学生さんとの会話から自分の考えていなかったアイデアを含めて刺激を貰うことは多い。

2023/04/04 (Tue.)

  • 勾配流解析をするために論文を精読していると、基本的に知らない線形代数の知識で驚く。今日驚いたのは、可換な正方行列同士は(固有値が重複しない場合は)固有空間が一致するということ。証明を追えばそれほど難しくないことだけれども、可換性がそんなところに結びつくとはよもや思いもしていなかった。

2023/04/03 (Mon.)

  • 新年度一日目。今日は白眉同期の花見ということで、鴨川デルタで花見をした。思いがけず小俣さんと隣席になって、随分と科学哲学とか翻訳、歴史哲学的な話について、ほぼ他の人そっちのけで2時間くらい話し込んでしまった。どうやら自然科学側の人間で翻訳の課題について考えていることを話すだけでも人文系研究者からすると面白いらしく、自分は自分で翻訳に職業として取り組んでいる研究者がどのような気持ちで立ち向かっているかを聞けるだけでもありがたかった。自分は常に自分の思考基盤が西洋形而上学に支配されているのではないかという感覚があり、その悩みを率直に打ち明けて議論できる相手がいるというだけでも、白眉という環境は面白く懐が深い場所であると思う。
  • 「実績:鴨川でオンラインミーティング」を解除した。ミーティング相手には申し訳ない。

2023/04/02 (Sun.)

  • 昨日はフランスにいる間に公開されてからずっと気になっていた映画の「BLUE GIANT」をようやく見に行けた。漫画で既に結末は知っていたものの、それでもクライマックスのシーンの前に心の準備ができなかった。本当に良い作品だったのか、自分が単に年々感傷的になっているのか、よくわからない。それでも、漫画では存在しなかった音楽が乗ったことによるドラマ性の向上は間違いなくあったと思う。
  • フランスで講義したときのことをブログにまとめて更新した。結局前の更新から2ヶ月経ってしまった。読書の習慣を比較的保ててるのはいいのだけれど、どうしてもインプットばかりにかまけてしまい、アウトプットを怠りがちになる。