Random thoughts in Japanese. All optinions are my own.

2025/10/31 (Fri.)

  • 今週も立川生活を一週間やりきった。セミナーやディスカッションが多く密度が濃かったが、合間合間で実験コード書いたり論文を読んだり、充実度は非常に高い一週間だった。ディスカッションしているプロジェクトがどれも少しずつ進捗が産まれている実感がある。ような気がする。
  • 10月はバンド練、楽器の個人練に打ち込んでいたので本当に忙しかったが、しかし問題は明日からの2週間。

2025/10/30 (Thu.)

  • 先日読んだ Fukumizu-Amari (2000) (2025/10/14) に続けて、Fukumizu (2003) も読んだので、特異点理論の観点からこの2つの論文の関係性を簡単にまとめておく。[FA00] は MLP が特異点を持つことを示したことが主たる貢献で、層方向に関して階層的な構造を考えると、target の回帰関数(teacher network)よりも幅の大きい student network には特異点が生じる。その特異点由来で学習ダイナミクスがプラトーに落ちることは数値的に示している(福水先生の後日談では、実はこの数値例を見つけるのは結構大変で、特異点がちょっとあるくらいではなかなかプラトーを意図的に起こしづらいとのことではあったが)。一方で [Fuk03] は尤度比検定の正則性条件に興味があり、特異点があるケースでは尤度比が 0 に漸近しない問題を指摘。特に target function を原点とする locally conic model に対して尤度比発散することを示し、応用先として MLP も局所的には conic model とみなすことができる点に着目。技術的にはより前の GMM に対する同種の結果の拡張になっているらしい。なので、この2つの論文は特異点の存在がどのように正則な状況から逸脱するか、その逸脱の仕方が各々異なる現象を取り扱っている。漠然と特異点論と聞いてきたけれど、この2本を読んだだけでも解像度は上がった。
  • 統数研で自分が関わってる学生を連れ出して Green Springs でディナーを奢った。若者も楽しんでくれていたようで良かった。研究活動も含めて大学院の環境を学生が楽しんでくれるのが一番嬉しいし、できるだけそうなるようには努力したい。

2025/10/29 (Wed.)

  • カフェイン禁止生活5日目、耐えられずコーヒーを淹れた。ブルンジのカジバジバ。コクの中に華やぐフルーティーな香りが良い。5日ぶりのコーヒーは格別に美味しいように感じられる。また数日我慢する。
  • 今月末、あまりにも忙しいことは覚悟していたつもりだったが、覚悟がやや足りなかった。ライブ2日前夜、まだもう少し練習しなければ。木曜、金曜もミーティング尽くし。ライブが終わってフランス語の試験を乗り切って、軽井沢まで行けたらだいぶ峠を超える。

2025/10/28 (Tue.)

  • 一日デスクでうんうん唸っていたが、研究の進捗がほとんどなかった。ようにも思われるのだが、お昼すぎにやった簡易的な数値実験で gradient descent の 2 phase dynamics のような挙動が観察できたので、それは一応進捗だと思うことにする。
  • 平日の夜に池袋まで赴いて、ライブ前の詰め込みバンド練。この期に及んで楽器が下手なのが相変わらず嫌になるが、仕事の後に三々五々集まって楽器を練習して、それからメンバーで晩ご飯に行ってビールを飲むこの感じは青春感があって、そこだけ切り出すと良い一コマのようにも思える。明日以降も個人練を頑張ろう。

2025/10/27 (Mon.)

  • 健康診断で脱水気味で精密検査判定されてしまったのでカフェイン禁止生活を突如としてはじめたのだが、そのせいなのだろうか、いつもに比べて仕事中に妙に眠い。今朝はまあまあ寝たはずだから寝不足ではないと思うのだけど、カフェイン不足なのだとしたら、普段は全くカフェインの覚醒作用を意識していなかったが、実は相当に効いていたということになる。それはそれとして、仕事中に頻繁にコーヒーの香りが恋しくなってしまって仕方がない。

2025/10/26 (Sun.)

  • 研究室の後輩の結婚式に参加させてもらった。とても楽しい夫婦生活を過ごしているんだろうなというのを垣間見て、幸せな気持ちをお裾分けしてもらった。研究室の元同僚たちも結構呼んでもらっていたので、終わったあとも久しぶりに雑談して研究生活の身の回りことを話し合ったりした。よい休日だった。

2025/10/25 (Sat.)

  • 三河さんの実証実験を見に未来館に行った。未来館はもう6年ぶりになるだろうか。常設展もご厚意でチケットをもらったので回ってみた。ちょうど量子コンピュータの展示をやっていたので眺めていた。思うことは色々あるにはせよ、計算という抽象的な対象をいかに目に見て手で触れられる形に落とし込むかに腐心しているのは努力が感じられる。僕に真似は到底できないと思う。まあ当然、ある程度古典的になった内容を、それも比較的一般向けに説明しやすいものをピックアップしているとは言えども。館内を見渡すと老若男女、いやむしろ20歳前後の若者が多いように見受けられた。別に学校で連れられてきたというわけでもなく、親と一緒に来たわけでもなく、という風貌で。結構意外だった。科学博物館なんてかなりマニアックな場所だと思うし、少なくともいま研究者をやっている僕は学生の頃そんなに興味を持って訪れたことはないから、きっかけは何にせよ、こうやって足を運んでいる若者には脱帽する。本来は科学を人口に膾炙させるのは非常にチャレンジングであると思うから、サイエンスコミュニケーター側も努力が報われているのではないだろうか。

2025/10/24 (Fri.)

  • 今日も学生の原稿を直したりディスカッションしたり。やはり回を重ねるごとにきちんと成長しているように見えるので、やり甲斐はある。これを大学教育と呼んで良いなら教育は嫌いではないと思う。
  • ディスカッション中に気になったが、離散力学系の安定性解析は連続の場合の Hartman-Grobman のような見通しの良い道具はあるのだろうか。

2025/10/23 (Thu.)

  • 今期の査読を終えた。計6本、本気を出せば他業務をこなしながら1週間でどうにかなった。今朝も6時に起床して日課の論文読み(査読とは関係ない)を終えてフランス語を少し勉強し、彦根までの電車で査読論文を1本読んで、午前中で査読を書ききった。やっているときは何も考えていないけど、振り返ってみると半日でかなりの量の作業ができている。
  • 某所の担当者にほぼダメ元でお願いしていた GPU 購入費がなんと(多少は勿論減額されたものの)承認されたらしくて、かなり驚いている。最近の研究費ではまともな規模の GPU を買うことすらできないのを知ったのも最近で、正直無理だと思っていた。手元に良い GPU の載ったサーバーがあるのは嬉しい。Wisteria の性能と使い勝手は良いのだけれども、どうしてもジョブスケジューラが混んでいるときは結構待たないといけないので。Root を握っているサーバーであれば、クラウドでは無茶な長時間計算もできる。
  • 仕事が順調にたくさん進んだので、昼下がりにコーヒーを飲みながら彦根城の堀の前で研究のことを考えていた。青空の下、ちょうど良い暖かな日差しで体を温めながら、共同研究の実験評価の方針を立てた。頭の中の整理になったし、何より非常に幸せなひとときだった。

2025/10/22 (Wed.)

  • 久しぶりに京大に行った。COSS が最後だと思うので、3ヶ月ぶりか (2025/07/22)。朝、百万遍から7号館まで歩いていると、もう異動してしまったのが全く信じられないほど自然に感じられた。先週までここで働いていたんじゃないかと思うほどに。
  • 竹澤さんと large stepsize の研究について少し議論しに行ったのが本目的。「線形分離可能でないデータだとどうなるのか」が問いで、以前から少し気になっていた Meng et al. (2024)がどうやって周期軌道を構成しているのか気になって少し読んでみた。すると、実は「stepsize < 1 / smoothness」と「stepsize < 1 / Hessian-eigenvalue(w^*)」が本質的に違うらしいことが見えてきた。後者の条件を破っているときに周期軌道解は構成できるのだが、それでも前者の条件は破れていない。周期軌道解になるように構成された目的関数は、局所的に最適解のまわりで見ると十分に smooth なのだが、大域的に(遠目で)見るとほとんど区分線形関数で、smoothness が破られている。だから大域的に振動する。そんな要点だった。

2025/10/21 (Tue.)

  • 先日の萩谷先生と話したことが気になって Web で調べていたら、萩谷先生が日本学術会議に関わっていたときの寄稿「情報学を定義する–情報学分野の参照基準」が出てきた。曰く、「情報学は,情報によって世界に意味・価値を与え秩序をもたらすことを目的に,情報の創造・生成・収集・表現・記録・認識・分析・変換・伝達にかかわる原理と技術を探求する学問である.」といった力強いメッセージが打ち出されていて、情報処理の寄稿にもかかわらず重厚感はあった。「世界の意味と価値」。そうなんだよな。「情報」とは何かを考えると、結局意味と価値に帰ってくることになるのが自然なのだと思う。コンピュータアーキテクチャ、数理モデル、計算量、チューリングマシン、情報量、いずれも重要な数理的基盤であることは間違いないのだが、それは手段であって目的でない。
  • ようやくソロ譜の3コーラス目のどうしても指が回らなかったフレーズがギリギリなんとかテンポに引っかかるようになってきた。指が回っているわけでは全くないけれど、もう少し時間をかければ吹けるのではないか、という段階までは来た。本当に時間がなさすぎる。あと10日でライブなのが信じられない。

2025/10/20 (Mon.)

  • はじめて Lenka Zdeborová のトークを聞いたが、思ったより面白くなかった。なんでだろうと考えながら聞いていたが、単に聞いてもあまり学びがないんだろうなと思った。研究結果の羅列をされても「はいそうですか」以上のことが得られない。僕は「なんでそういう解析モデルを置くのか」「直感的にはなぜそういう結果が得られるのか」「テクニカルには何をやったのか」ということが知りたかった。逆に自分がトークをするときは反面教師にしなければならない。

2025/10/19 (Sun.)

  • 久しぶりに朝8時まで寝た。昨日の「情報科学」の話が寝ても覚めてもまだ頭の中を駆け巡っている。僕は情報科学をやれているんだろうか。これは学問的大義ではなく、自分のアイデンティティの問題である。
  • そう言えばフランス語では計算機科学・情報科学は総じて l’informatique と呼ばれていることを思い出した。Bluesky で聞いてみたところ、どうやらスペイン語など近隣の言語でも informatics 相当の言葉で呼ばれているらしい。これは英語(米語?)で computer science と呼ばれているのとは大きな違いで、情報が学問的対象として確立されていることの証左だったりしないだろうか。
  • 昨日指導教員と喋ったときに「機械学習は今どういう研究をすべきだと思いますか」と聞かれて、少し虚をつかれた。そんな質問をされたことがなく、教員の立場になったから聞かれたのか、はたまた本当に悩んでいるのか(僕にはそう見えた)。後者だとしたら柄にもないので意外だなあと思う。僕は僕なりに答えたけど、先生はどういう考えだったんだろう。

2025/10/18 (Sat.)

  • 蔵前のホテルに一泊した。1年半ぶりか (2024/03/29)。ホテルにびっくりするくらい海外旅行者が多くて驚いたが、街は閑静で落ち着きがある。朝、6年前に行った隅田川沿いのカフェ (2019/08/16) が、ネットを見ると閉業しているらしくてどうなってるのか気になって行ってみたら、建物ごと取り壊されていて、対岸のスカイツリーが堂々と見えていた。無常でもありつつ、スカイツリーの聳え立つ姿を見入ってしまって不思議と清々しい気持ちになりつつ。でも、この静かで落ち着いていて、決して綺羅びやかではなく、しかしモダンな要素も入り混じっている、この目立たないカオスが好きなのだ。
  • 出身学科の50周年記念シンポジウムに参加した。あまりこういう場でもないと色々な関係者の「情報科学観」を直接知ることもないから非常に良い機会で、思っていた以上にシンポジウム全編通して内職もせずに聞き入っていた。特に萩谷先生の「情報科学、コンピュータ科学という学問分野を総称する良い名称がないものか考えあぐねている」「情報科学は学問を『学問する』ポテンシャルを秘めている」あたりは非常に惹かれるところもあって、祝賀会では先生を捕まえて一対一で質問攻めにしてみた。あまりに萩谷先生の主張に対して食い下がり続けるような形になってしまったので申し訳なさもありながら、個人的には自分の「情報科学観」を少し精緻にできた。僕が気になっているのは(昔どこかのタイミングで藏田さんに言われたことなのだけれど)「情報科学はいかなる意味で科学なのか、所詮人間のアーティファクトを対象にしているのであればその原理を詳らかにする大義はどこにあるのか」という点だった。萩谷先生にそういう話を振ってみると、結局のところは「情報処理システムがいかに対象のドメインに対する知識獲得で価値を生むか」が情報科学と数学・物理学を隔てる点であるという。いわばプラグマティズムである。でも僕はそれだと価値判断基準がドメイン側にある以上、それはドメイン科学なのであって情報科学ではないのではないかと思う。それに対して萩谷先生は「ドメイン科学の価値判断と、ドメインで価値を生む情報メカニズムの両輪である」という。しかしどうにも詭弁のごとく感じられる。ドメイン科学に軸足を置くと価値判断がそのドメインに束縛されるから(それ自体はドメイン科学としては忌み嫌われるべきことではない)、ドメイン科学よりもメタレベルでドメインを抽象化する必要が出てくる。その抽象化したレベルでメタサイエンスを行う、つまり個別のドメイン科学の価値判断の共通構造を抽出することはメタサイエンスとして多かれ少なかれ可能ではあるのだと思うけど、抽象化のレベルは人間の側に恣意性があって、いまいちサイエンス性を欠くというか。しかし、それは物理法則だってどのスコープで法則記述するか恣意的に決めるしか無いのだから、構造的には同じと言うべきか。果たして。
  • なんでこれほど気になるかというと、僕自身が相対主義に与するのかしないのかを見定めたくて、この一連の話はメタスコープの恣意性の捉え方次第では相対主義に結びつくからだ。
  • 100%腑に落ちた訳では無いが、おかげでこれまでよりも多少自信を持って情報科学をメタ科学として位置づけられるような気がする。昔駒場祭 (2021/11/23) でもメタ科学の話をした。そのときはメタ科学のメタ性の構造的側面は理解してはいたけれど、科学性については認識していなかったように思う。上はその科学性に関する考察であり、萩谷先生にはありがたい機会を一方的に貰ってしまった。今度お会いする機会があったらお礼を言いたいけど、お礼の言い方がわからないので困ったものだ。

2025/10/17 (Fri.)

  • 今日は学生とのミーティングが2件、学生の論文の添削を1件。教員らしい生活だ。特に、少し方向性が迷子になって心配していた学生が、案外筋の良さそうな方向性に舵を切れてきたので、僕の方も競争戦略や差別化理論などの価格設計のモデルの勉強をさせてもらえたし、ダイナミクスの解析ということで僕も自分の知識で提供できることがあった。大変有意義だった。学生の面倒を見るのは一筋縄ではいかないが、きちんと誠実に向き合っていれば成長していくので、やり甲斐はある。勿論、僕が接している学生が高いポテンシャルを最初から持っていて、それに恵まれているというのはある。

2025/10/16 (Thu.)

  • 今回の立川出張でとったホテルの環境がギリギリ許容できるかできないかのラインで、一晩過ごしたけど疲れてしまった。リノベしてあるのはわかるのだけど、壁のそこかしこにシミが残っていたり、フロントが妙にホコリくさい雰囲気(実際にホコリくさいわけではないけれど)で、提供された朝食を口に入れても(プラセボだとわかっていても)変な味がする気がする。2泊だから堪えられるけど一週間は無理だ。宿代をケチってはいけないことは痛いほど学んでいる (2022/12/12)
  • 帰り道、立川ジェシージェームズを見かけて店の前でふと立ち止まった。学生時代幾度となく名前だけは聞いたことはあったけどすっかり忘れていた。そういえば立川にライブハウスがあった。今日は休業だったらしいが、月間スケジュールを見てみるとちらほらと同世代プレイヤーで(一方的に)知っている名前が並んでいる。すごいなあ。みんなこうやって頑張っているんだな。今週は都合があわなくて無理だけど、今度ふらっと立ち寄りたい。同世代が頑張っている楽器の音を聞きたい。

2025/10/15 (Wed.)

  • セミナーで echo state network の話を聞いた。キーワードだけは聞いたことがあったので詳細が知れてよかった。基本的にはランダム特徴量を用いたランダム結合ニューラルネットだと理解したのだけど、中間ノード数を多めにもっておけば readout の学習だけで実質的に巨大なネットワークの最適化になっている(lottery ticket hypothesis の要領で)し、ひょっとしたら readout の学習が選択的に背後の物理メカニズムの推定になっているんじゃないかという気もするし、色々と気になった。セミナー後にぼんやり思ったけど、ランダムネットワークが巡回を許すグラフだったらテスト時計算もできそうだし、さらには非決定性チューリング機械の実装もできる?
  • 冷静に考えて、今日一日でゼロから査読を1本終えて、ポスターを1枚作り終わったのは、作業効率がかなり上がっているのを如実に感じる。査読もポスターも1つ仕上げるのに最近まで丸1日は最低でもかかっていた。成長してこなせる仕事の量が増えて嬉しい。

2025/10/14 (Tue.)

  • 論文投稿締切を終えたいまこそが勉強するチャンス、ということで、福水先生の25年前の論文をざっと読み終わった。かいつまんで言うと、2層MLPの層方向の「階層性(つまり幅が1大きいパラメータ空間に元の幅のMLPを埋め込む構造)」を解析の道具として使い、パラメータ空間で見ると一見安定に見える臨界点が、関数空間で見ると実は鞍点になっているような臨界点(便宜的に「intrinsic saddle」と呼んでいる)を構成的に与えている。滅茶苦茶に面白い。いまちょうど力学系の準安定性に興味のあるタイミングなので、すぐにも準安定性解析の適用可能性や、Muon 等の現代的な最適化手法を使ったときに抜け出せるのかみたいなことを知りたくなる。25年前に着想されているアイデアを現代的な深層学習の研究にリバイバルさせられたら、それこそワクワクするだろう。特異点論、パラメータが識別不能なんだなくらいの曖昧な認識だったが、ご利益が見えると俄然興味が湧く。
  • 濃厚で良い論文を精読しているだけで幸せに浸れる。これだけでこの職業についていて良かったと感じる。

2025/10/13 (Mon.)

  • 日課の論文読みをやって、ジム行って楽器の練習してフランス語のレッスンを受けて散歩をしていたら連休が終わった。もう少し本と論文を読みたかったが、時間は有限なので仕方ない。まあ振り返ると日常の延長線上だけど、退屈ではなかったと思う。なぜか毎日ピザ生地も捏ねて焼いた。

2025/10/12 (Sun.)

  • 「アメリカ人はノーベル賞に興味がないのはなぜなのか: 文化的意義について」を読んだ。非常によく書けていて資料分析も行き届いている記事だった。アメリカにおける科学研究システムのサステナビリティに関しては、概ね僕が認識している様相と大きな相違はなく、人材を「育てる」のではなく人材を「引き寄せる」国であるという分析がなされていた。それは良い面も悪い面もあるだろうが、世界選抜的トッププレイヤーの場が意識的にせよ無意識的にせよ提供されているということは、アメリカ一国がどうかというのはさておき、グローバルレベルでの科学水準の向上には大きな利益をもたらしているのは間違いないだろう。そのため、アメリカ以外の国が同じ戦略を取って科学を遂行するというのは端から筋が良くない話であることは認めざるを得ない。したがって、アメリカ以外で科学に携わることを決めた時点で、人材を「引き寄せる」よりも「育てる」ことに舵を倒すべきなのか。しかしそうは言いつつも、アメリカほどではないにはせよ、日本はそれなりに諸外国の学生に対する魅力的であるのは肌感覚としてはある。そうした外国人科学者に対してオープンであることは、やはり科学推進の上では重要なのではないか。特にそれがアメリカ以外の場所で多かれ少なかれ実現可能であるならば、それは科学の(アルファ・ベータ両方の意味での)多様性の向上に寄与するのではないだろうか。アメリカではない土地で人材を「引き寄せる」戦略を取る意義はそこにあるのではないかと信じたい。
  • はじめて高野川沿いを散歩した。秋の夕刻、透き通った高野川の水面に映りこむ、ほのかに赤みがかった青空とたなびく雲の佇まいは、目を惹きつけてやまないものだった。気づけば秋も中盤に差し掛かろうとしている。

2025/10/11 (Sat.)

  • 朝一番でジムに行っている間、昨日まで修正していた証明のことが頭を離れず、帰宅の途中で突然証明が間違っていることに気づいた。その後掃除したり昼ご飯を作っている間も証明の修正をずっと考えてしまっていたのだが、夕刻に修正方法を思いついて直しきれた(と思う)。今回は結果がかなり自然なメカニズムとして理解できるので流石に正しいと思う(思いたい)。何度目の正直か。
  • 寝ても覚めてもついつい研究のことを考えてしまうのは多分研究者としては僥倖なのだけれども、問題が解けないと気分が悶々として他の何事にも集中できなくなってしまうから、普通に生活に支障をきたして困ってしまう。贅沢な悩みなのだろうか。

2025/10/10 (Fri.)

  • カメラレディ用の論文修正がようやく収束した(はず)。急いで導出した結果なので、途中で2回くらいそれなりに大きめのミスがあったけれど、確認を何回か重ねたので流石にもう大丈夫だろうと思う。昨日の続きだが、集中不等式を適用できるまで burn-in 期間待つのは、言い換えればS/N比が小さくなるまで待つとも言える。別に SGD の挙動からすれば何のことはないけれど、最適化が進むにつれてS/N比が小さくなっていく、という描像を式の上で確認できて、理解が一つクリアになったように感じる。良いカメラレディ対応だった。

2025/10/09 (Thu.)

  • 今週の立川出張は学生との議論、マネジメント業務、諸々よく頑張った。こればかりはリモートワークではどうにもならないから、お金と時間を払ってでもオフィスに来ている意味がある。あと一日あるけれど、ねぎらって帰りの新幹線ではプレモルを開けた。
  • さて、NeurIPS のカメラレディを用意している過程で、リバッタルの時点では自明だと思っていた SGD への拡張がどうも自明ではないらしく、きちんと整理すると GD よりもだいぶレートが悪くなることがわかった。その理由もかなりクリアに理解できて、ようするに確率的勾配に対して集中不等式を適用できるようになるまでだいぶ SGD を回さないといけなくて(burn-in みたいなもの)、それがボトルネックになっている。結果は理想的ではなかったけど、その数理的理由はよく理解できたし、その過程で人生ではじめてマルチンゲール不等式を使う機会を得たので、非常に満足。本当はカメラレディは今週の頭でさっさと終えてしまおうと思っていたので想定よりもだいぶ時間を費やしてしまったけど、良い勉強になった。

2025/10/08 (Wed.)

  • 数日ぶりの晴天だ。秋晴れがこんなにも恋しくなるとは思わなかった。
  • 昼ご飯を食べながら矢野さんにエレベーターピッチで先日仕上げた単調回帰の研究を紹介したらかなり興味を持ってくれた。矢野さんはいつもバックグラウンドが広くて色々な話を掘り下げてくれるし、並大抵の研究者ではできないよなと思う。特に自身のバックグラウンドが広いだけでなく、きちんと相手の研究を深ぼろうという意識を感じる。自分もそうありたいものだ。
  • マネジメント業務を3つくらい同時にこなしながら、論文の修正と実験を回していた。まだまだ仕事は終わらないけど、マルチタスク能力は明らかに向上している。

2025/10/07 (Tue.)

  • 先日気の迷いで海外の学部生からの問い合わせに応えて、今日インターンの面接をしていた。数学科の学部生だったのもあるけど、フランス人だったからというのも大きかった。けれど面接をしてみたら今すぐに研究をするには不安の残る受け答えで、やはり面接をしてよかった。学生には申し訳ないけれど、こちらもどうにもリソースが十分にあるわけではないので、無尽蔵に受け入れることもできない(無尽蔵に受け入れるのは教育に対する無責任さの裏返しですらあるから)。
  • 大小様々なタスクがあるが、TODO リストに積まれているタスクが9個になった。僕がこれほどタスクを積んでいるのは初めてかも。関わっている学生の数も、マネージャー業務も、着実に増えている。そんな中、昼前の空いた小一時間で2000年頃の論文を印刷して精読している時間は非常に至福だった。やはり研究している時間というのは何にも代えがたい満足感がある。

2025/10/06 (Mon.)

  • 締切明けに学生とミーティング×2。いよいよ教員然としてきた。整備の一通り終わったオフィスとホワイトボードが早速活用できているのも密かに嬉しい。二人ともトピックは僕がきちんと興味を持てる方向性なので、しっかり時間をとって貢献したい。自分の領分ではないので、僕自身は新しく学べることが多いものの、本人たちの研究の落としどころをどこに持っていくかは非常に気になってしまう。
  • 急に秋本番の肌寒さが訪れて、気づけば立川では鈴虫と蛙がさかんに鳴いている。今日は雲が立ち込めて、5時半にはもう非常に暗くなってきた。このまま気持ちの良い秋も通り過ぎてしまうのか?日光が恋しい。

2025/10/05 (Sun.)

  • 早朝から東京へ向かい、午前中のバンド練に行った。練習を終えて立川まで辿り着いて、糸が切れたように眠ってしまった。
  • 高市さんが自民党総裁に決まった直後の「ワークライフバランス発言」を目にしたり(総裁選にはいろいろ思うところもあるが)、今日もバンド練の後で芝さんの相変わらずの仕事のスケジュールを聞いたりして、僕も覚悟を決めて仕事に向き合わないとならないよなあと思う。こういう職位にいる以上発生する職責を全うしなければならない。マネジメントと自分の研究、二足の草鞋を履きこなす。いまの一つ上の世代の研究者がマネジメントにすっかり回ってしまい、自分で手を動かす時間もなく研究の動向をわからずに教育職に留まっているのを見て、自分は反面教師として抗い続けなければならない。

2025/10/04 (Sat.)

  • 締切の翌日でも癖が抜けず朝起きして論文を読む。まあこれくらいでもして習慣化しておかないと業界の動向に関してどんどん鈍くなってしまう。
  • 昨日の件の続きを考えると考えるほど週明けが憂鬱になる。自分の能力不足、失態に起因しているなら自責で捉えることもできるけど、こと他人のことに至っては本質的には僕の力で抜本的に解決することはできなくて、本人が改善するしかない。それを促す責任はマネージャーである僕にのしかかっているから、そういう意味では僕の能力の至らなさにも帰着されるけれど、これまでの仕事上の悩みとは質が違う。どうすればよいのだろうか。

2025/10/03 (Fri.)

  • ダメだ、マネジメントの件 (2025/08/04) が全く収まりそうになく、八方塞がりになっている。どうしたらよいかわからない。管理部に相談しに行ったら(泣きついたら)何かが変わるだろうか。なんで僕はこんなに雲を掴むような手応えしかないのか。
    • しかし自分がこの件の愚痴を言っては絶対にならない。いまこうやってなまじややこしくなっているのも、井戸端で噂話が蔓延しているからなのであって、それを僕がやってはいけない。毅然とした態度で対応すべきことを対応するしかない。
  • 締切当日ではあるが、今日はもうほとんどマネジメント業務。非常に面白い研究になったと思うが、実験を成功させて論文を書き始めてからおよそ1ヶ月 (2025/09/04)、自分の中では既に風化してしまい、面白みが薄れてきてしまっている。完全に自明になってしまう前に論文を書き上げられてよかった。実は今週非常に近そうな研究が arXiv に上がっていたりしたのだけど、よく読んでみると結局 vector quantile の推定にしか興味がないらしいので僕たちがやっていた研究とは違っていて、そう思うと客観的には全く自明ではないんだよな。しかしこれだけ2ヶ月ほど集中して研究しているとさも当然のようになってしまう。
    • それだけ intense に考え続けても自明にならない研究ってあり得るのだろうか。僕の性質をもってしてもあり得るのだとしたら見てみたい。

2025/10/02 (Thu.)

  • 締切前になると自分でも驚くほど集中して論文を執筆し続けられる。最後の詰めで文献整理をして原稿の推敲。一日脇目も振らず作業していたのでどっと疲れた。

2025/10/01 (Wed.)

  • 気づいたら10月になっていた。論文の執筆と別論文のリビジョンと別プロジェクトの実験を同時並行でやっていて、本当に研究漬けである。1日の消費エネルギーは凄まじいが、自分が苦手だと思っていたマルチタスクが段々とできるようになっている(のかもしれない)。やりたいことは絶えないから、マルチタスクの処理能力を上げるしかないのだ。
  • 学振の結果が公表されたらしく、今年は全体的に採択率が7、8%らしくて怨嗟の声がそこかしこから聞こえてくる。まあ色々と改善すべきことはあると思うのだが、僕らの目線から見たら手っ取り早いのは JSPS と JST を統合してしまうこと。明らかにいらない仕事が行政側でも研究者側でも発生していると思う。一度 JST 側の人に突っ込んで聞いてみたいものだ。