Random thoughts in Japanese. All optinions are my own.

2024/02/29 (Thu.)

  • 長旅からの帰宅。途中ドイツのトランジットでシェンゲンビザが必要だったのに気づかなくて急遽フライトを振り替えたりでトラブルもあったけれども、2週間ぶりに京都に帰ってきた。数日前までブエノスアイレス、ウシュアイアにいたことの実感が薄れ始めている。

2024/02/25 (Sun.)

  • ブエノスアイレスに戻って明日の帰国への準備。アルゼンチンに来たときは低出力であまりブエノスアイレスを隅々まで回らなかったけど、さすがにカミニートとボカは行ったほうがいいなと思って、少々治安が悪いのは承知の上で回ってきた。ここでもやはり、映画『ブエノスアイレス』のロケ地であるところのニコラス橋を拝み、歩くことができた。これが一番嬉しい。いつの間にかウォン・カーウァイがこれほどまでに好きになっている。まあ結局人間の好き好みなんてこれくらいのノリなのだろう。

2024/02/24 (Sat.)

  • Ushuaia では泊まっているホテルが良かったので午前中は部屋でのんびりして、ゆっくり街を散歩しながら午後に少し自然を見て回っている。昨日はティエラ・デル・フエゴ国立公園、そして今日はビーグル水道のクルーズに乗った。映画『ブエノスアイレス』の灯台をきちんと拝んできた。灯台の姿を見たとき、ついにここまで来たという感慨が込み上げてきた。アルゼンチン旅行の終盤だ。

2024/02/22 (Thu.)

  • 昨日は Lago Argentino の湖畔でゆっくりと日向ぼっこして El Calafate の街を少し眺め、そして今日はついにアルゼンチン最後の街 Ushuaia までやってきた。El Chalten、El Calafate、Ushuaia と、どの街も囲まれている自然の雰囲気が違っていて飽きない。Ushuaia は流石に緯度が南極に近いので南半球の夏場のはずなのに気温は本州の冬とさして変わらず、立山連峰を想起されるような(見たことないけど)峻険で、雪を戴冠した山々が連なる。浜辺の干潟にはとてつもない種類の水鳥が飛び交っている。これが最果てのフエゴ島、そしてビーグル水道。地図でしかその名前と地形を見たことのない島。ここに来れたこと自体が嬉しい。

2024/02/20 (Tue.)

  • 今日から El Calafate へ。早速 Perito Moreno 氷河を観に行く。最初は展望台から氷河を観て、確かにこれはすごいのだけれどもこんなもんかな、と思っていた直後で実際に氷河の上でトレッキング。これが良かった。スケール感がまるで違うし、クレバスの深さを眼の前で見られる。氷河の雪解け(氷解け?)水をペットボトルに詰めて一口。冷たくて潤される。一日10時間満喫できるアドベンチャーだった。

2024/02/19 (Mon.)

  • El Chalten での2日間、本当に良い思い出になった。丸一日かけて Laguna de los Tres まで、岩山の上であり得ないくらいの風に煽られながらなんとか辿り着いた湖畔、視界が悪くて Fitz Roy は全く見えないけれど、後ろを振り向くと眼下には穏やかな El Chalten のキャンプが広がっているという、なんとも言えない不思議な感じ。体力的には比叡山とそれほど変わらないかもしれないけれど、気持ちの問題でなかなかに登るのは大変だった。良い景色だった。
  • El Chalten の街は基本的にレジャーで来ている人たちだけで、メインストリートもせいぜい2本くらい。ビアバーが軒を連ねていて、どの店に入っても美味しいビールと塊肉がいただける。山に登って美味しいものを食べるだけの世界。

2024/02/17 (Sat.)

  • ブエノスアイレスを後にして、1日がかりで El Calafate を経由して El Chalten まで移動。今日はもう一日移動日で本でも読んで過ごすか、と思っていたのだけれど、El Chalten までの道中の3時間のマイクロバスの旅路があまりにも美しすぎる。パタゴニア。砂漠に悠々と流れる浅葱色の大河、その向こうに広がるのは雪を戴冠した鋭い岩山。すごすぎる。窓の向こうを見入ってしまう。感情の高揚がいつまでも止まらない。
  • パタゴニア。中学生のときに地理の授業で聞いたその名前はどこか枠に収まっていない奇妙な名前だと感じていた気がする。風と砂漠の大地であると知識では知っていたものの、そう簡単には言い尽くせないものがある。風。並の台風が比べ物にならないくらいの、体感毎秒30メートル以上の風が常に吹き荒れている。ただその風を体で受けながら立っていることしかできない。

2024/02/16 (Fri.)

  • ブエノスアイレス2日目、思いの外暑くて日中はあまり徒歩で長時間活動できない。カフェをはしごしながら現代美術館や墓地を巡る。
  • 連日 Bar Sur に来た。今日はタンゴを観るために。『ブエノスアイレス』の舞台の建物そのものの中にいるということに言葉にならない嬉しさを感じる。タンゴを観たのははじめて。軽快なラテンアメリカ音楽とともにキレの良い踊りに見応えがある。これを観れただけでも地球の裏側まで来た甲斐があるように思える。

2024/02/15 (Thu.)

  • ブエノスアイレスに着いた!28時間ものフライト、仕事をして映画を見て本を読んでも全く終わらない。でもギリギリ耐えられるラインだった。もう一本14時間のフライトに続けて乗れと言われたらもう耐えられないと思う。これだけフライトが長いと、到着したときの高揚感はとてつもない。
  • 機内で観たクリストファー・ノーランの『ダンケルク』がよかった。年末のアメリカ出張のとき (2023/12/10) に観たノーランの『TENET』も結構良かったけど、自分は『ダンケルク』の方が好き。セリフは少なめの映画で、ダンケルクのシリアスな救出劇を静謐な音楽とともに映像で描く。本当に良い絵には余計な言葉はいらないということがよく分かる。『EO』(2023/09/18) もそう。
  • ブエノスアイレスに着いて、結局初日に Bar Sur に行った。ウォン・カーウァイ (2023/09/18) のロケ地。こんな四半世紀以上経ってもまだ健在していて、映画の公開の四半世紀後に自分がただ一人、ここに立っている。そのことが嬉しくて、意味もなく静かな路地裏にしばらく立ち尽くしていた。

2024/02/14 (Wed.)

  • 総計28時間のフライト、いまは羽田から9時間、北極上空。一日以上飛行機に乗り続けるなんてはじめて過ぎて憂鬱で脇腹がやや痛くなってきたけれども、これも一つの経験ではある。
  • 羽田のラウンジでは原稿を修正して、フランクフルトまでのフライトの中ではジャーナルの査読を一本仕上げた。査読がフライトの中で終わるととても得した気持ちになれる。これだけ仕事をしていたら、この後思い留まることなく休暇を楽しめそう。

2024/02/13 (Tue.)

  • 今日から休暇。何も仕事なく東京まで来たはずなのに、新幹線では査読をしているし、ホテルに着いたらミーティングはしているし、で相当慌ただしかった。
  • 半田の個展に行った。今回のテーマは「作品と人間の主体性について」であり、これ自体は僕自身も計算機や科学によってその対象だけでなく観測者・操作主体と思われていた側すらまでも脱個性化、客体化されていくのではないか、と感じていたので、相当に刺さるテーマだった。展示を見終わった後に二人で雑談をしていたときに、半田の口からいくつも鋭い言葉が紡がれるのでメモが止まらない。いくつか挙げておくと、「脱人間主義の志向こそが人間の主体性の介入によるものなのではないか(そしてそれに対して抵抗したかった)」「参加型アートは作者から鑑賞者に対するある種のコードを強制するという意味でのヒエラルキーが存在しているのでは」「だからこそ作者は作品のもたらす帰結に対して責任を負うべきなのではないか(= 主体の脱構築は責任逃れとも言えるのではないか)」「“デジタル” は逆説的に “アナログ” の実存を再現を希求する」「アートや科学のプロトコルは脱個人化を促すかもしれないが、それに内在する主観性のデコードは可能なのではないか」といった具合。しかし、この時点では僕自身も「主体性」が自分の中で大事なキーワードであることは認識しつつも、それがどのような重要な問いに結びついているのかに関してはうまく答えられない。向こう10年くらいかけて一緒に「問い」を探していこう、ということで、今日の会合は締めくくられた。
  • 夜は芝さんと神楽坂で。1年少し前、インドに行く直前 (2022/12/09) に会ったぶり。博論審査や育志賞受賞など祝うべきことをまとめて祝えたのと同時に、僕の大きな悩み、「他人の人生に対してどこまで責任を負って踏み込むことができるのか」「国内のコミュニティの先細りに対してのやり切れなさにどう折り合いをつけるか」について、スパッと気持ちの良い回答をもらうことができた。曰く、自分は国内のコミュニティで他人が先陣を切って盛り上げていくのを期待する立場から、自分自身でコミュニティを形成していくフェーズに(主に精神面において)移行しつつあるのではないか、そしてそのためには自分の価値観を掲げて他人を巻き込んでいくというスタンスが必要なのではないか、ということ。ポール・グレアムの「悪しき中庸」に関するエッセイを思い出す (2020/10/05)

2024/02/12 (Mon.)

  • 一日慌ただしく読み残した本を読み、査読をし、荷物の準備をする。ほぼ一瞬たりとも無駄にした記憶はないのに、気づいたら23時である。明後日にはフライト。

2024/02/11 (Sun.)

  • 気づいたら3日後にはアルゼンチンへ飛び立つ。何も準備していない。とりあえず今日は米ドルを用意しなければならなさそうだということを理解した。ギリギリすぎる。少しくらいスペイン語を勉強しようかとか言っていたけれども、そんな余裕はどこにも見当たらなかった。
  • 日記を見返したら、去年の COLT 締切前後も相変わらず意味の分からないスケジュールだったことを思い出してきた。締切 (2023/02/10)、ライブ (2023/02/11)、集中講義の準備 (2023/02/16)、白眉合宿 (2023/02/19)、そして渡仏 (2023/02/20)。なんなんだこの10日の密度は。
  • でも去年の Rennes 滞在は良かった。モダンで綺麗で、文化もあるけれどパリかぶれていない、そしてそれでいてエキゾチックな街並み。また行ってみたいなあ。

2024/02/10 (Sat.)

  • 珍しく土曜出勤して、共同研究者と積もる話をお昼にしてから別れた。これで年始から続いてきた長い論文投稿の旅が一段落。ようやく安堵感が出てきた。
  • 共同研究者はちょうど自分より一世代上くらいなので、研究者のキャリアパスについて見てきたこと、経験してきたことについて、ゆっくり話をした。つくづくアカデミアの成果主義とライフイベントの相性の悪さに辟易とする。しかも、二、三世代上の研究者の中でそれなりに家庭を犠牲にしてきて、しかもそれがまるで美徳かのように語る人たちがいるのが、我々世代の感覚からすると信じられない。そればかりはもう数年、十数年待って、世代交代が行われるのを待つしかないのか。
  • 家に帰ってきて、はじめてホットチョコレートを作ってみたりした。意外と簡単にできて美味しい。甘さ、スパイスの量をお好みで調整できるのがポイント。
  • 夜は京都に来た友人夫妻とワインを飲んだ。相変わらずの仲睦まじさに、一方的に幸せのおすそ分けをもらってしまう。今はまだ30手前だけど、あわよくば末永く付き合い続けたいものだ。

2024/02/09 (Fri.)

  • 投稿完了!まさか締切10時間前にようやく初稿が完成するとは。こんなにギリギリだったのは M1 ではじめて ICML に投稿したとき以来なのでは。
  • 振り返ってみると今回の COLT 論文は本質的には膨大な ε-δ に基づく結果だったというわけで、初等解析の重要さを改めて思い知る。丁寧に追えば本当に大学一年生の知識でも追えるはず。僕が大学一年生当時の力量では皆目無理だと思うけれど。共同研究者の技を見ていてときどきはっとすることがあって、liminf を lim と inf にわけて抑えるのがうまい。たぶん僕が受けた解析学の授業が初等的な内容に留まっていたので liminf/limsup の扱いに全く慣れていないというのもあると思うが、一つ一つのステップは大したことがないように見えるのに、そこから導き出せる主張が非常に foundational。それこそが初等解析の強みなのだと思う。
  • ようやく終わって一息。まだ終わった実感はない。明日は溜まっていた仕事を片付けて一度頭を整理しなければならない。そうしたらようやく締切を越えた実感が湧くのではないだろうか。

2024/02/07 (Wed.)

  • 共著の原稿をひとつ読んで直しては次のを読んで直すのをひたすら繰り返す。修正稿打ち返しマシン。

2024/02/06 (Tue.)

  • ここ数日でなんとか踏ん張って proper loss 論文の原稿を埋めきった。こちらもこちらで締切4日前。全くもって久しぶりにこんなギリギリな執筆をやっている。まだ校正しなければならない。綱渡りの一週間。
  • 週末に買った作業机が家に届いた。昨晩は組立作業で一苦労だったが、使い始めてみるとすこぶる快適。今まで自宅には作業用の机がなかったので、長時間のパソコン仕事はどうしたって疲れるものだったが、それなりにゆとりのある作業空間と高さのある机があるだけでパソコン仕事の楽さが断然違う。
  • 白眉セミナーで待望の(?)佐藤さん会だった。自分からは「向社会的行動はハミルトン則のような適応度モデルの観点から理解できるか」という質問をしたところ、「ハミルトン則のようにモデル化すると利他性の定義の仕方ゆえに必ずモデルが当てはまってしまう」という回答が得られて、はっと気付かされた。言い換えれば、ハミルトン則的モデリングは種全体としての適応度の向上が起こるような行動のことであるが、観測された個体は適応度が高かったがゆえに観測されているのだから、定義からしてモデルに当てはまる観測しか得られない。本来はそういった行動の心理的メカニズムを調べたいかもしれないのにかかわらず、行動のメカニズムがある種都合よく操作的に隠蔽されてしまう。定量化できないものには蓋をする態度の帰結なのだ。

2024/02/03 (Sat.)

  • あと一週間後には論文投稿の締切から解放されていると思うと、その後に次の研究ができるのが嬉しすぎて、何の研究をしようかとついつい暇なときに想いを巡らせてしまう。色々やりたいことは山のようにあるけれど、今一番興味があるのは proper loss の拡張だと思う。去年 Rennes で集中講義をしたとき (2023/02/28) に学生から「なぜ Lp loss は p=2 以外では proper じゃないのか」という質問を受けたときに、p=1 が proper ではないという説明は用意していたのだけれども、例えば p=3 のときにどうなるかは突っ込んで聞かれるまであまり考えたことがなかったのだけれども、計算してみると実は proper ではないものの単調変換を加えることで実質的に proper にできそうなことに気づいた。Focal loss とかも(Nutt が昔研究したように)そうなので、たぶん「proper ではないけれども proper に準ずるクラス」というのを考えることができる。これは確実に(少なくとも一般論としては)誰も着目したことのない概念だと思うので、かなりインパクトが大きいと思う。
  • お風呂の中や布団の中、ジムでの筋トレ中にもついついずっと計算してしまう。楽しい。上の scoring rule の基本的な特徴づけは頭の中ではできたような気がする。

2024/02/02 (Fri.)

  • ICML の締切終わり。加えて COLT 向けに準備している論文の共著者の証明が正しいことを一通り確認し終えた。少し頭がスッキリした。
  • 「10分」の OB/OG Slack で文科省の大学政策に関する雑談が発展して、若手研究者のライフプランの話で大いに盛り上がって(燃えて?)いる。結局のところ、任期付きポジションの問題に加えて、業績圧のある環境下ではどこでも構造的に育休を取りにくい、あたりが、たぶん我々から少し上くらいの世代がリアルタイムに直面している問題なのだろう。僕はある意味では当事者ではないけれども、完全に当事者として直面している知り合いもたくさんいるので無思慮に放言すると人の感情を逆なでしないかとても気を遣ってしまう。僕は僕の立場から見える問題を提起していく必要があるというのと同時に、自分が構造的な差別に加担していないか常に自問する必要があるというジレンマ。

2024/02/01 (Thu.)

  • 2月?あまりにも早すぎる。
  • ここ数日で仕事用のパソコンの動作が急に不安定になってきた。常時ファンは鳴っているし、一日に一回くらいブラウザが勝手に落ちる。まだ締切を控えているというのに。
  • Transformer 研究、あれだけギリギリだったのになんとかまとまったと同時に、終盤に実験をやっているうちに面白い現象が見えてきた。例えば、(固定学習率による訓練だけど)訓練序盤で loss は急激に落ちている一方でパラメータトレースが一時的に上昇して、それからまた落ちる。何か相転移のような現象が起きているような気がしていて、転移の前後で果たして何を学習しているのか。現象論としてはこれはなかなか面白い課題なのではないか。こういうのは実験をやっていてはじめて見えてくる。実験に対して肯定的になれる瞬間。