DELF A1 を受けた
最近独学で DELF A1 というフランス語の試験を受けて無事合格したので、備忘録として簡単に経緯をまとめておきたいと思います。
DELF とは
欧州言語の習熟度を定量化するための CEFR (Common European Framework of Reference for Languages) という基準があり、様々な言語の試験スコアが概ね CEFR の各レベルと対応する形になっています。 DELF はフランス国民教育省認可のフランス語資格で、CEFR の各レベル(A1、A2、B1、B2、C1、C2)と試験レベルが対応しており、例えば私が今回受験した DELF A1 に合格すると CEFR A1 相当のフランス語能力の証明になります。
A1 はレベルとしては全く難しくなく、日常的な語彙を網羅的に扱えなくても最低限の語彙さえ押さえていればあとはなんとかなるくらいの入門レベルです。後述しますが、相手のフランス人が忍耐強ければフランス語でギリギリ会話が成り立つかも、程度です。学習時間の目安は60時間から100時間程度だそうですが、これはヨーロッパ言語ネイティブ話者の目安なので、日本語ネイティブだともっとかかると想定するのが良いとのことです。
なぜフランス語?
- 過去(英語以外の)外国語にいくつか手を出してみては全く身につかなかったのを繰り返しているので、そろそろ克服したい
- 数理科学を稼業にしていると、外国人の中でも相対的にはフランス人に接する機会が多い
- 初めての出張がフランスだったし、以降も何かとフランスに出張している
- 漠然と文化的な憧れがある
- 発音の雰囲気が何となく好き
あたりです。ちなみにその他の外国語学習歴としては、学部のときにドイツ語を1年履修したのと、パンデミックのときに暇だったので自宅で韓国語のテキストを1年くらい音読していたくらいです。当然どちらも全く身についていないので、衒学以上の意味はありません。
2023年3月に1ヶ月フランスに滞在して帰ってきてから「今度こそフランス語をやらねば」という気持ちになったのが大きなきっかけですが、結局実際に勉強をはじめたのは2024年4月です。
独学の流れ
よくわからなかったので、最初の半年弱(2024年4月〜8月)は YouTube の英仏対訳みたいなのをずっと聞いていました。 特に理由はありませんが、FrenchPod101 を見つけたのでこれをメインに聞いていました。英語の例文フレーズが読まれたあと、フランス語の対訳が読まれるのがずっと続く感じです。本当に一言フレーズなので、英語で言うなら “I like to play tennis in my free time.” とかそれくらいのレベルと長さです。この間、文法書や教科書、単語帳の類は一切見ておらず(というか別に現時点でも一冊も教科書は持っていない)、ずっとフレーズを聞いていただけです。聞く量は日によってまちまちですが、最低10分、長い日は1時間くらいです。
半年くらい経った時点で Pimsleur というアプリがどうやら良いらしいと知ったので課金しました。月額2300円くらいです。FrenchPod101 のコメント欄を見ているとフレーズのチョイスが微妙というか、やはり教科書フランス語すぎるきらいがあるらしく、ネイティブはそんな言い方はしないというのを見かけたので、そろそろ何か他の教材を探すかと思っていたタイミングでした。Pimsleur は1日30分のポッドキャスト教材で、2分くらいの会話パッセージの後、そのバリエーションで色々なフレーズが読まれてリピート、シャドーイングする感じです。作られた教材なので限界はありますが、比較的リアルなフランス語に近い模様です。また、ストリーク機能があるのが地味にポイントで、1日10分以上は聞かないとストリークが途切れるので、何となく毎日やらないといけない気持ちになります。私の場合は海外に行ったときに行き帰りの時差で不幸にもストリークが切れたりするので結構ショックなのですが、逆に言えば継続するのによいモチベーションになっています。加えて音声教材である性質上、ほぼいつでもどこでも勉強できるため、だいたいスーパーに買い物に行くときや掃除機をかけているとき、料理しているときなどに勉強できるので、勉強コストが低いです。Pimsleur は2024年9月頃から使い始めて今でも継続しています。よほど忙しい日でない限り、1日1レッスンの30分はやります。全部で150レッスンあるのですが、下のレベルから何周かしながらレベルを上げており、約120レッスンを2周くらいしました。完走するまでもう半年くらいは使おうかなと思っています。一応レベル的には CEFR A2 相当くらいはあるらしいです。
2025年2月頃から duolingo を始めました。普通は duolingo から入るような気もしますが、知り合いに誘われたのがきっかけで後から始めました。Duolingo はあまり説明はいらなさそうですが、exp boost が切れるまでポチポチやることが多いので、忙しくないときはだいたい1日20分くらいやっている気がします。こちらもストリークがあるので、半年ほど Pimsleur と duolingo のストリークに同時に追われています。そのため2025年以降は、2つ合わせて少ない日は30分、平均的な日は1時間弱くらい勉強している計算だと思います。Pimsleur は文法の説明をあまりしない、かつスペルも見ないので、そこは duolingo と相補的になっている気はします。ちなみに DELF A1 受験時点では duolingo のフランス語レベルは35(early A2)くらいだったような気がします。
あとは YouTube でいくつかフランス人のチャンネルを時たま聞いたりします。よく聞くのは Français avec Nelly とか innerFrench です。このへんも2025年に入った頃から聞いている気がします。お風呂から上がった後寝る前まで5分とか10分とかくらいです。正直な話、いまのレベルでは字幕なしだと2、3割くらいしか聞き取れません。たまにフレーズが聞き取れたときの嬉しさをモチベーションにしています。
なので最近は1日1時間くらいやっていますが、特に Pimsleur はながらで良いので、体感ではそんなにフランス語のために時間を割いているわけではなくて、それゆえ継続しやすい感じがしています。
課題は明らかに会話量が足りないことです。そろそろオンラインレッスンを受けたいと思い始めてから数ヶ月経っています。
DELF 対策
DELF は6月上旬に受けました。 一応 DELF A1 向けの対策テキストを購入したのですが、あまり手を付ける時間がなかったので、はじめて本を開いたのが試験2週間前とかでした。 リーディングとライティングはテキストの参考問題をさらっと眺めた感じ A1 レベルだったら対策なしでも乗り切れそうだったので、リスニングとスピーキングに残りの時間は全振りしました。というかリスニングも Pimsleur で耳は慣らしているつもりではあったので、8割くらいのエフォートはスピーキングに振りました。 試験前1週間くらいで対策テキストのスピーキングのセクションだけは8割くらい目を通して、問題形式に慣れたり、フレーズを作って一人で喋ったりして練習しました。
試験結果
- リスニング: 18/25
- リーディング: 24/25
- スピーキング: 23.5/25
- ライティング: 23/25
でした。リーディングとライティングは解いた時点でほぼ解けた感覚だったので、だいたい相違ない結果でした。リスニングは想定していたより聞き取れませんでした。独学を始めた当初からどうせリスニングがボトルネックになることは想定していた(英語のときもそうだったので)ので、意図的に YouTube とか Pimsleur を使って耳から慣らす作戦でしたが、まだ足りていません。まあリスニング試験あるあるとして、8割方聞き取れていたとしても重要な情報が一瞬で流れてしまい、選択肢は絶妙な引掛けになったりしていることが往々にしてあるので、純粋なリスニング能力に加えて集中力のテストみたいな側面もあるのですが…。
スピーキングも体感全然できていなかったので、結果が思ったより良くて驚きました。たぶん A1 レベルなので採点基準が甘めなのだと思います。試験官は聞き取りやすいように意図的にある程度ゆっくり喋ってくれているので聞き取れないことはないのですが、こちら側が喋るときに言葉に3秒くらい詰まるシーンが度々あったので、たぶんそこはあまり減点しないよう優しめになってるのだろうと思います。余談として、買い物のシミュレーションをするシーンでお会計が9.5ユーロだったのですが、試験としては現金で何コインが何枚とか数を喋ることを期待されていたと思うんですが、咄嗟に面倒くさくなって「カード払いで」と言ってしまい苦笑されました(現金払いで言い直しました…)。
それで結局どれくらい身についたのか
2025年7月上旬に1週間と少し再びフランス出張(Lyon、Rennes)に行ってきたので意気揚々とフランス語を試してみました。Lyon について空港からの電車で臨席していたフランス人のおじさんが親切そうだったので話しかけてみたら、案の定私の拙いフランス語にもかかわらず懇切丁寧に喋ってくれて、Lyon の観光案内をしてもらいました。20分くらい喋っていたと思うのですが、この間は本当に英語を使っていないので、理解できないながらにも相当に色々な情報を聞き取れて感動しました。
とはいえこれはおじさんが親切で、私のレベルにあわせて明らかにスピードを遅めに、かつ簡単めな語彙を使ってくれていたのでついていけていたというのも事実です。その後街中では、例えばホテルのチェックインはフランス語だけだとやや厳しかったり(予約の確認とか朝食の有無とかはなんとかなるのですが、清掃を毎日するかどうかみたいな絶妙な内容になるとまだ聞き取れない)、レストランではそもそも店員さんが外国人慣れしていて、フランス語で喋ると即英語で返事が返ってきたりと、まだまだ難しいと感じます。スーパーでの買い物とか、カフェでの注文はプロトコルが固定されているのでまあなんとかなる。
今後
A2 はもう少し準備をしたら受けられそうな気がするので、できれば半年か、遅くとも1年以内に受けたいと思います。その後は未定ですが、B1 までは最低受けたい。A2 と B1 にはそれなりにレベルのギャップがあると思われるので、今のペースだと早くても2026年後半になりそうな気がします(特に締切があるわけではないので気長に頑張ります)。勉強方法は悪くはないと思っていますが、会話の練習の必要性はひしひしと感じるので現在検討中です。現時点で1年半弱勉強してきましたが、一応3年くらいを目安にまずは継続してみようと思っています。