Random thoughts in Japanese. All optinions are my own.

2025/09/12 (Fri.)

  • フランス語のオンラインレッスンを始めたのに伴って、経費削減で Pimsleur の課金を止めた。ほぼ丸1年間課金して毎日聞いていたおかげで、去年の前半の時点では今思うとかなり基礎的なフランス語のフレーズでさえも全然聞き取れていなかったのが、少なくとも文法構造は聞いてなんとなくわかるようなレベルにまで来ているのだから、使ってよかった。
  • 提案法が本当に強い。確率較正なんて割と良い具合に混雑しているレッドオーシャンなはずなのに、temperature scaling ほか古典的に「固い」ベースラインを軒並み淘汰している。今度は複数回実行して平均を取っているので、昨日よりも確度が高めの評価のはず。ちょっとしたトリックでそれなりに高速化もできた。うまくいきすぎて浮足立ってきた。早く論文を書き上げて色んな人に見せびらかしたい。

2025/09/11 (Thu.)

  • 数日コーディングして確率較正のベンチマークを取れるようになったので、作った単調回帰アルゴリズムを試してみたら想定していた以上にどうやら性能が良いらしい?現状提案法は全くスケーラブルではないのですごく小さいデータセットでしか試せていないのだけれども、temperature scaling でさえ達成できないような非常に高い性能向上幅をたまに実現することがある。まだ検証が必要なので糠喜びはできないけれども、当初は「まあ性能低下しなかったとしても顕著な性能向上は見られないだろうな」と思っていたので、こんなに性能が上がる期待感があるとは思いだにしなかった。
  • この単調回帰の研究、数理と実験の両輪の美しさでは、自分の研究者人生過去最高なのではないかという気さえしてくる。

2025/09/10 (Wed.)

  • 今週は所内にやたらと人が少ないと思ったら、よくよく考えたら連合大会だった。結局2年前に京大で開催されていたとき (2023/09/04) に初めて参加したきり一度も行っていない。時間が無尽蔵にあるなら行っても良いのだけど、そんなに学会に出張していたら研究する余裕が全くなくなってしまう。ただでさえ山積している研究がたくさんあるのに。最近はできるだけ行く学会の数を抑えるように努力をしている。
  • ものすごい数の出張やミーティングをしている精力的な若手を見かけると、穿った目で見てしまう。自分が自力で思考する貴重な時間がどんどんフラグメンテーションしてしまわないですか、と。とはいえ人のことをとやかく言う暇があるなら自分の襟を正すべき。
  • コードを書く。ベースラインの実装は全く気が進まないが、重い腰を上げて、先人が公開してくれている実装を移植する作業を無心で行う。LLM のお陰で移植時のパッケージのバージョン違いなどに起因するエラーも瞬時に解決する。

2025/09/09 (Tue.)

  • コードをひたすら書く。久しぶりだ。色々なデータセットが読み込めるようになったので、スケールアップして実験ができるようになる。LLM が使えるので以前よりも明らかに効率的に書けている。
  • 坂上さんが立川まで来てくれて議論を少ししていた。その後は午前中に積み残したコーディングに邁進してしまって、それはそれで進捗が出たので良いのだけれど、後から振り返るとせっかく人が来てくれているのだからこの数時間で共同研究をきちんと進めればよかったなあと思う。

2025/09/08 (Mon.)

  • 立川へ。8月はほとんど研究所にいなかったが、9月、10月はそれなりに研究所にいる時間がある。頑張って研究をしよう。
  • 京大時代に少しだけ面倒を見ていた学生が統数研に長期滞在したいということで、話が本格的になってきた。僕としてはこの秋から留学生が一人来るタイミングなので、一人だけ学生が来るよりは二人以上のほうが学生の間でコミュニケーションが取れる余地ができるので、それはありがたい。

2025/09/07 (Sun.)

  • 数日前から唐突に読書の習慣を取り戻したのだが、これはやはり良い。今日はエルンスト・マッハの「探求されるべき『実在』を想定せずに人間の諸『経験』の関係を記述するのが科学である」「科学の仕事は、私たちが到達できない、そして決して達成できない目標を達成するための無限の努力としてしか見ることができません。[…] それではすべての科学が無意味であり、“野生のガチョウの追跡"に過ぎないと宣言していることになるのでしょうか?まったくそうではありません、私たちは正しい方向に進むように私たちを導く現実のいくつかの具体的な証拠を明らかにする知識の成長するループを組み立てるために私たちの労働の成果を蓄積することができるからです」という言葉を識ることができたのは、読書のおかげに他ならない。前者はカイヨワ (2025/09/04) へのアンチテーゼ、後者はジェイムズ、ポパーへの強い影響を想起させる。僕自身にとって馴染みの良い考え方である。マッハの著作を読みたいと思い始めたのが修士の頃、既に8年ほども経ってしまったことになる。そして今なお、僕自身の考え方を補強するために強力な礎となるだろうことを追認し続けている。今読まないでどうするか。
  • 出張で京都に訪れていたサークル時代の友人と久しぶりにあった (2025/02/13)。前回と違って今日はサシ飲みだったため、話しているうちになぜかどんどん科学論の話に突き進んでいった。どうやら僕がくねくねと書いた駄文も読んでくれていたらしく、望外の喜びである。自分自身が決して自己満足できる文章を書けているとは思わないけれども、少なくとも書かないことには前進しないのである。そして周囲の知人に思っている以上に恵まれており、彼らは僕の書いたはしたない文章であっても読んで面白がってくれるらしい (2025/04/24)。それは、僕たちが文章に残したいと切に願っていることが独善的な思想なのではなく、共時性を持った世代的現象であることに裏付けられているのだろう。そう、20世紀的自然科学のパラダイムままではこの時代は生きていくことはできず、常に鋭利な眼光を持って革命の時宜を虎視眈々と狙わなければならないのである。その旗揚げのために、文字を、文章を、紡ぎ続かなければならないのである。

2025/09/06 (Sat.)

  • 『ヰタ・セクスアリス』を再読した。記録を見返したら最後に読んだのは2018年5月、修士2年生のときだったので、7年ぶりらしい。半年ぶりに本を読んだ (2025/03/22)。4月ころにフーコーの『言葉と物』を読み始めたのだが、難解過ぎてシンガポールやプーケットの出張中にスーツケースの奥に沈み込んだまま、本を読む気力が失せてしまっていた。少なくともここ5年くらいはコンスタントに本を読んでいた(読み切るのに1ヶ月くらいかかることはあったにはせよ)ので珍しい。本は難しければ読みきらなくても良い。別の本を漁れば良いと思う。
  • はじめて『ヰタ・セクスアリス』を知ったのは、記憶違いでなければ中学2年生の現代文の授業のときだったと思う。当時の先生が小テストで漢字の書き取りに混ぜて小説の作者を訊く問題をよく出していて、その中で異彩を放っていたのが『ヰタ・セクスアリス』だったような気がする。20年弱経ってもまだ記憶に残っていると思うと、感慨深いものがある。「1000人の生徒がいて1人の心に届ければそれでよい」(2021/11/23)
  • 近所の Paddy に立ち寄った。民家の中にひっそりとしていて、知る人でないと辿り着けないような場所。水出しアイスコーヒーはマスカットとチョコの風味が香る、キリッとしたフルーティーな味わい。フルーツのタルトとよく合う。京都もとい西陣界隈には他所では巡り会えないような落ち着きがあるという得難さを、東京に仕事で頻繁に戻るようになってから再認識してきた。

2025/09/05 (Fri.)

  • 先月大塚さんと議論していた内容 (2025/08/01)、今週に入ってから既存のリポジトリのコードを再現実行してみたり、Claude に検証コードを書かせてみたりしていたら、当初の仮説を支持する予備的な実験結果が早速得られた。こんなに一発でうまくいくとは思っていなかったので拍子抜けした。しかも vibe coding があまりにも効率的すぎて、実際の検証自体は今朝起きてから始めたのに、デバッグも含めてわずか2時間程度で終わってしまった。本当にすごい時代だなあ。毎週末に週報を Slack に投稿する、と啖呵を切ったのも良かった。毎週少しずつでも時間を取ろうという気持ちになれるので、僕の苦手なマルチタスキングの一助になっている。
  • 今週は仕事も少なく、コーディング作業が多めだったので、体感とても生産的だった。

2025/09/04 (Thu.)

  • 今週は割り込みが少なくて研究が顕著に捗っている。朝から文献を整理しながら、いまソルバーでなんとなく呼んでいる逐次二次最適化の実装を眺めてみたが、たぶん微分不可能な問題に適用してしまっている。まあ実用上はそれでも差分法で勝手に微分ライクな量を推定して最適化してくれていて、それが思いの外にうまく行っているというのも面白い現象ではあるのだが。いずれにしても実験がはじめからうまくいっているというのは心理的安全性が大きい。
  • しかしこの研究、考えれば考えるほどすごく良い研究に思えてきた。元々5年前に Fenchel-Young loss に魅入られ (2020/04/24)、最適輸送に魅入られ (2020/07/02)、それらに通底する凸解析の構造が撚り合わさって、最適輸送の凸解析の構造を GLM の凸解析の構造に接続した研究と言っても過言ではないだろう。凸解析が単に問題の構造を衒学的に抽象化するだけの無用の長物ではなく、実際に役に立っている。「凸解析の真髄は何か」と問われたら、「視覚的理解を促すから」というのが一つの答えだったけれど、この研究では「多次元の構造を一次元の延長線上として捉えられるようになるから」、言い換えれば「多体系の自由度を大幅に落とせるから」という新たな着眼点も得られた。
  • 先週札幌での懇親会でふと「この世が単一のスケールにおける物理法則で理解出来なければ、自分が生きる意味を見失ってしまう」という言葉を耳にして、そのときは何馬鹿なことを言っているんだ、人間の理解は本質的にマルチスケールでしかありえないだろう、と思っていた。学会会場でもシニアの先生含めて概ねその意見が多数派で、あまり気にもとめていなかった。しかし日記を読み返していると、カイヨワの「過度に人間中心主義を嫌う傾向自体も逆説的に人間中心的である」「宇宙は解きほぐされ得るということに賭けなければ、思考にいかなる意味もない」(2024/06/03) という言葉が改めて目に入ってきた。逆説的な人間中心主義、か。たしかに極端な二元論に陥っていたかもしれない。

2025/09/03 (Wed.)

  • 9月に入ってから朝夕に通りに吹く風が一気に涼しくなった。日中は暑いと言えどもやはり9月ではある。
  • 小一時間集中してコードのリファクタリングをやった。数理最適化をやっていると、コードを書く時間よりもむしろ最適化の結果が望ましくないときに数理的な方面のデバッグに悩む時間が多いから、これくらい集中してコードを書くのは久しぶりだ。運動後のような爽快感がある。実際はそんなに本質的なことをしているわけではないのだけれども、まあそれでもときには作業に充実感は必要である。

2025/09/02 (Tue.)

  • Yutong が帰国してから (2025/06/27) 実質初めてのミーティング。もう2ヶ月半経ったのか。その間出張や休暇を挟んだりしてだいぶ時間が経ってしまったけれど、先月 (2025/07/21) 思いついた最適輸送ベースのアイデアを議論した。とても面白がって貰えてよかった。実際フレッシュな着眼点に基づく良いアイデアだと思う。Yutong と議論していなかったら辿り着けなかっただろうと思う。
  • そしてミーティング後に少しコードを弄っていたら、単調回帰をほぼ完全に復元することに成功した!こんなに綺麗にフィッティングを復元できるとは。非常に encouraging な実験結果である。ここ数ヶ月で最も嬉しい研究の結果かもしれない。まだ実験を太らせたりなど、やるべきことは山積しているが、しかし既に自信を持って論文を書くことができそうだ。締切までちょうど1ヶ月。今季も良い研究を残す。

2025/09/01 (Mon.)

  • 限られた語彙ですごく簡単なフレーズならフランス語で喋ることもできなくもないけれど、流暢さのかけらもない。英語でさえどのタイミングで流暢に喋れるようになった(少なくとも自信が持てるようになった)のか全く記憶がない。まあ多分ミシガンに行ってからだろうな。そうすると、中学1年生で英語を勉強し始めてから13年も経っていることになる。本当にフランス語を身に着けたいなら、3ヶ月くらいはフランス語圏で生活してみる必要はあるだろうな。
  • 1週間ぶりに自宅で腰を据えて勾配の計算をしたりする。思えばやはり先週はディスカッションに出張に、忙しかった。できるだけ暇な時間を作る必要がある。先日逡巡した結果来週末ワークショップに参加することにしてしまったことは若干後悔している。